11月10日、民放キー局の第2四半期決算が出揃った。私はこの決算に大いに注目していた。今年の春から地上波テレビの視聴率が驚くほど下がっていたからだ。テレビ局の人と話すたびに「視聴率の下がり方が尋常ではない」と悲鳴を上げていた。
実はコロナ以降、テレビ局の業績と視聴率は乱高下を繰り返していた。
2020年は緊急事態宣言で4月5月を山に視聴率が急上昇。コロナで巣ごもり生活を強いられ、みんながテレビを見たからだ。それなのに業績は急落。各キー局の第2四半期・決算資料から放送収入だけを取り出して前年度と比べると、タイム枠(番組の中で流れる提供CM)で10%程度、スポット枠(番組と番組の間に流れるCM)では30%前後も下がっていた。コロナ禍で多くの企業が身を縮め、広告費を大きく減らしたせいだ。
翌2021年度は企業活動が息を吹き返し放送収入は急上昇。コロナ前の2019年度にかなり近づくレベルに回復した。だが視聴率はダダ下がり。巣ごもり生活も落ち着き、みんなが出かけるようになったからだろう。
つまり2020年、2021年と視聴率と業績が反比例する形になったのだ。コロナによる乱気流を脱した2022年のテレビ局はどうなるのか。視聴率が悲鳴をあげるほど下がっているということは……結果は予想を超え惨憺たるものだった。
5つのキー局の放送収入の上期合計額は、2019年度の4104億円から乱高下の末、2022年度は3832億円に大きく下がった。
一方ゴールデンタイムのPUT(総個人視聴率・各局個人視聴率の合計)は2019年度の36.5%が急上昇と急降下を重ねた末、2022年度はさらに下がって33.3%となった。
放送収入は272億円下がり、視聴率は3.2%下がったのだ。特に視聴率は、これまでなかったほど下がってしまった。
視聴率が下がった原因は、巣ごもり生活を経て無料のYouTube視聴やNetflixなどの有料VODを習慣的に見る人が増え、メディア生活が分散したせいだろう。PUTがこれだけ下がったのはおそらく、これまでテレビ視聴の主役だった高齢層にもネット動画が浸透し始めたせいだと思われる。若者のテレビ離れが、老若男女に広がっている。その結果が3.3%の個人視聴率ダウンにつながった。
最近、例えばドラマの視聴率を語る記事に私はイライラしていた。朝ドラ「ちむどんどん」が評判が悪く、だから視聴率も2010年以降最低だ、と論じる記事を見かけたが、2020年後期から朝ドラの視聴率はどんどん下がっていた。2010年以降ワースト1、2、3は最近の3作「おかえりモネ」「カムカムエヴリバディ」「ちむどんどん」が占めている。「ちむどんどん」だけを槍玉に挙げるのはおかしいのだ。
この夏のドラマは平均世帯視聴率2桁超えが1つしかなく不作だったとの記事もあった。いやいや、史上最大の視聴率ダウンが続いているだけだ。私が計算したところ、2019年と2022年の8-9月の各番組の平均視聴率を比べるとどれもこれも急落していた。「報道ステーション」は13.7%から12.0%に、「サザエさん」は10.2%から7.8%に、一時期高視聴率で話題になった「ポツンと一軒家」では19.2%から13.9%にそれぞれ急落した。
かつてない異変にテレビを評するメディアがまったく気づいていないことに苛立った。だがこの決算ではっきりしたと思う。テレビ放送は歴史的下降に見舞われているのだ。
ところでキー局の業績を個別に見ると、気になることが出てくる。2019年度と2022年度の放送収入を比べると各局とも下がっているわけだが、まずTBSは-1.5%と傷が浅いことに気づく。そしてもう1つ、フジテレビだけ2桁ダウンであることも、否応なく目についてしまう。