「いい人に見られたい」「好かれる上司になりたい」これは誰でも思うことです。
しかし、上司が会社から求められているのは、部下を使って業務をこなし、収益を上げることです。好かれる上司になったからといっても、上司としての評価には関係ありません。やはり、結果を出してこそ上司の存在価値があるのです。そう考えると、部下のご機嫌を優先させるような仕事のやり方はご法度です。
叱るべきときは叱り、褒めるべきときは褒める。これが上司の仕事です。
私たち人間は、頭ではわかっていてもなかなかできません。いきなり「叱るべきときに叱れ」といっても体が反応しないのです。そのためには、普段から良好なコミュニケーションをとっておき、褒めるとき、叱るとき、フォーマルなとき、インフォーマルなときなど、メリハリのついた関係ができていなければなりません。上司と部下はお友達ではないのです。
そう考えた際に気をつけないといけないことは、部下の顔色をうかがうのと部下を思うことを履き違えないということです。上司であるあなたの思い(本心)から部下の「興味があること」「関心のあること」などをどんどん聞いてください。
妙な気遣いや下心のある態度は部下に見透かされてしまいます。そうではなく「あなたに対して興味があるのだよ」という態度を見せることです。
それでも部下に嫌われたなら、もう諦めてしまいましょう。そのぐらいに割り切って考えていたほうが、部下とのコミュニケーションはうまくいくでしょう。
上司のあなたは、部下に「時間を守りなさい」と日頃から伝えていると思います。これはビジネスの基本中の基本です。
多くのビジネスマナーの書籍でも第一に書かれているところで、これについては異論を唱える人はいないでしょう。
しかし、ただ単に「時間厳守」と言っても始まりません。なぜ時間を守らなければいけないのか、なぜお客様のところへの訪問は最低でも5分前までにその場に到達していなくてはいけないのか。
私も勤め人の時代にはいろいろな部下に出会いました。
なかには、いつも遅刻をする部下がいて、何度言っても遅刻が直らないので、当時は頭ごなしに「遅刻をする者は、社会人としての基本ができていない」「仕事に対する姿勢がなっていない」と注意を繰り返しました。
しかし一向に直る気配が見られず、揚げ句の果てには「時間さえ守ればいいんですか!」と食って掛かってくる始末です……。
そこで私は確信しました。彼らに「時間厳守しろ」と伝えるだけでは、心にまったく響かないのだ!と。そしてあるとき、社会人2年目の部下には次のように対応しました。
「遅刻をすると、お客様からどのように見られるか」を伝えてみたのです。遅刻した部下に対して、お客様が言っていた「学生気分が抜けきれていないな」というコメントをそのまま伝えてみると、本人は「そんなふうに見られているとは思わなかった」と、初めて聞く耳を持ちました。
ここで、「時間に遅れることはお客様、上司である私の時間を拘束していて、これをお金に換算すると〇〇円になるんだよ。それは……」と言って、時間が経済活動の根本にあることを伝えました。その後すぐに遅刻が直るということはありませんでしたが、きっと自分の中で「腹に落ちた」のでしょう。段々と改善されていき、最終的には時間厳守するようになりました。
ここまで伝えないと改善されないというのも情けないと思ったのですが、比較されることが少ない場合(たとえば、同期入社が少ないケースなど)、人の振り見てわが振り直すことが、ぴんと来ない環境なのだと実感したのも事実です。
事業が成功し拡大を望むならば、会社は人を増やしてさらに成長を目指すことでしょう。そして、従業員に仕事を任せて、経営者は経営のコアな部分に注力すると、更なる飛躍が望めるのです。