気づかないうちに、皆さんの視界から「あるもの」が、少しずつ消えていっています。それは何でしょうか。
実は「色」なんです。最近のAI研究で、世界から「色」が消えつつあることがわかりました。
英国科学博物館が、1800年代から現在までの数千のアイテムを記録し、時間の経過とともに色の変化を追跡して行った調査によれば、200年前には、「多くの色」が存在し、「黒」や「白」「グレー系」の色は全アイテムの約15%にすぎませんでしたが、現代では、なんと約60%が「黒」「白」「グレー」だったというのです。
たとえば、自動車の場合、ある記事のポーランドのデータによれば、1995年には、「青」や「赤」「緑」など華やかな色の車が半数近くを占めていました。2010年代に入り、その割合は2割強まで減っています。
そういえば、1980年代後半、私の弟が大学に入って初めて買った車も「赤」のスバル・アルシオーネ、私が昔、付き合っていた男性の車も「赤」のトヨタMR2、私が新聞社の新潟支局記者時代に乗り回していたのも「真っ赤」なスバル・ジャスティでした(懐かしい!)。
一般財団法人自動車検査登録情報協会の統計によると、2015年の国内の乗用車のうち、「赤い車」の比率はわずか4%、「青」が6%。一方で、「白」が47%、「グレー」が23%、「黒」が14%にのぼりました。この3色でなんと8割以上を占めるというわけです。
家やカーペットや家具、ファストフードの店頭などの色も「白」や「グレー」などが中心になってきています。
その要因のひとつが素材の変化です。かつての木材、布といったものから、「落ち着いた色」のプラスチックや金属が増えていることが挙げられます。
また、たとえば、家などを考えた時、将来売却を想定すると、「自分好みのカラフルな色使いのもの」や「個性的なもの」よりも、「汎用性の高いニュートラルな色調」のほうが売りやすいという要因もあるようです。
消費者の嗜好も多様化する中、10人が「素晴らしい」と思うより、1000人が「いい」というデザインや色のほうがリスクは少なくなるからです。
昨今は何を売るにも市場調査が行われますが、そうした調査のうえで、「最も幅広く受けるものを選ぶ傾向」はますます強くなっているといえるでしょう。