華やかさを削いだ、シンプルでミニマムなデザインは、企業ロゴの世界にも広がっています。
ロゴのデザインを大幅に変えた高級ファッションブランドが少なくないのですが、結果的に多くのロゴが非常に似通ったものになってしまったことが話題になりました。
たとえば、イヴ・サンローラン。流麗な斜め細字のロゴが太字文字のものへ、バーバリーもバレンシアガも細字から太字に変わりました。
すべてシンプルな大文字で黒字色が強くなり、結果的にどれも非常に似通って見えます。つまり、個性がなくなっているのです。
この傾向は2017~2018年頃に増加したと言われます。多くの有名ファッション企業が、これまでの「個性的でクラシカルなロゴ」を捨て、当たり障りのない、非常によく似た「サンセリフフォント」に切り替えました。
「サンセリフ」とは、ハネや飾りのようなもののないシンプルな角ばった字体です。非常に視認性が高く、読みやすいという特徴があるため、小さなモバイル上でもよく見えるというメリットがあります。
日本のフォントでいえば、「明朝体」が「ゴシック」へと変化したようなイメージでしょうか。
こうした「ロゴデザインの変化」はテック企業でも相次いでおり、グーグル、マイクロソフト、エアビーアンドビー、フェイスブック、スポティファイなどが次々と「個性的な文字」から「似たようなシンプルな文字」に変更しています。
日本の企業でも、たとえば、バンダイナムコが、今年4月、赤と黄色の背景色をなくし、吹き出しにシンプルな文字だけのロゴに変更しました。日産も2020年にシンプルなデザインへと変更。「『立体感のあるデザイン』から『平面的なデザイン』へ」というのもトレンドになっています。
ロゴの色も、たとえば、昔のアップルのロゴはカラフルな虹色のリンゴでしたが、今はシンプルなシルバーですよね。インスタグラムも、かつてはカメラの絵でしたが、赤みのある単色系のデザインに変わりました。
こうした傾向の裏にあるのは、情報過多の時代に、より多くの人の目に留まるように「装飾性」より「視認性」を重視する傾向です。
コミュニケーションも同様で、「情報」を絞り込めば絞り込むほど、「メインのメッセージ」は届きやすくなります。
というわけで、私の『世界最高の話し方』『世界最高の雑談力』も、表紙のデザインを一新して、一部書店で売り出しました。
前のデザインは青地にイラストやカラフルなデザイン、かなり多めの文字量でしたが、新しいものは、白地に金もしくは赤、そして、タイトルと著者名だけという究極的にシンプルなデザインです(外部配信先では画像を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
以前のカバーの上に、カバー全体を覆うような新しい帯をもう1枚つけた格好ですが、カラフルとシンプル、どちらが目に留まりやすいのか。
ぜひ、皆さんにもお手にとっていただき、感想をお聞かせいただけましたら幸いです。