「生産性を上げるには、こんな働き方をすればいい」
書店のビジネス書の棚を眺めると、そうしたテクニックを指南する書籍がずらりと並んでいます。しかし、テクニックはテクニックとして効果的ですが、「主体的に仕事を楽しむこと」「モチベーションを高めること」ができていなければ、身につけたテクニックの効果も限定的でしょう。
たとえば、どんなに高性能のスーパーカーをつくったとしても、エンジンを動かす燃料がなければ走りません。燃料=モチベーションがあってこそ、スキルやテクニックがより効果を発揮します。
生産性やパフォーマンスについて議論する際、「その人が前向きに仕事に取り組み、能力を発揮できる環境にいるか」を考慮するのは、とても重要です。
ここでひとつ、次の質問の答えを考えてみてください。
みなさんはどちらを選んだでしょうか?
たとえば、「料理やサービスの腕を磨いて、職人的なプロフェッショナルを目指したい」「いずれは独立して自分の店を持ちたい」と目標を持つ人は、「A」ではなく「B」に魅力を感じるのではないでしょうか。
一方、スケールの大きなビジネスを通じて成果や成功を収めたいと考える人にとっては、「A」に魅力を感じます。安定した収入や組織での出世を優先したい人も、「A」を選択しそうです。
ほかにも、「まったく新しいサービスで飲食業界に革命を起こす!」と夢を抱く人は、まず大手でノウハウを学んでからと「A」を選択するかもしれないし、プロの技術を身につけてからと「B」を選択するかもしれない。
このように、それぞれの描くキャリアや目標、仕事への向き合い方によって、選択する答えは変わります。
つまり、この質問に対する正解はありません。
読者のみなさん、それぞれの仕事観、キャリア観によって、選択はおのずと変わってくるからです。
ところが、現実はどうでしょう?
「A」が正解と思い込んでいる(または、その考えを相手に押し付けてくる)人もいるのではないでしょうか。
日本では、昭和の時代から“新卒一括採用”“年功序列”“終身雇用”などの雇用慣習や人事制度が組織に根付いています。その結果、就職活動では、極力リスクを取らないように、先々でいわゆる“つぶし”が利くようにと、「A」を選ぶことが勝ち組、つまり正解とされてきました。
「業界で有名な企業」「業界の大手企業」「給与が高い企業」等々。
そうした会社に入社し、定年まで勤め上げる。もしくは有名企業の看板で転職を有利に進め、キャリアアップしていく。「新卒カード」なる言葉も生まれ、そのカードを武器に、なるべく有名な企業に就職することが賢い生き方だと思い込んでいる人もいます。