私たちは、かつてないほど時間に追われて息苦しさを覚えている。世界中どこもかしこも、労働者は疲れきって青息吐息になっている。
そこで私が見つけた解決策が、「ホワイトスペース」と呼ばれるもの。1日の中に考える(そしてひと息つき、内省し、計画し、創造する)ための自由な時間を設ける、というアイデアだ。
グラフィックデザインの世界で、ホワイトスペースはページの空白部分を意味する。わが社では「予定が入っていない時間」と定義している。長いか短いか、計画的にとったか偶然空いたかはともかく、それはスケジュール外のオープンな時間であり、日々の活動を「戦略的に休む」ことで手に入る。
脳はホワイトスペースを愛している。これは、科学が証明している。小休止はパフォーマンスの向上に役立つ。
サンフランシスコを拠点とする、受賞歴のある神経学者アダム・ガザレイは、仕事中にときどき休憩を挟むことが、なぜ必要で効果的なのかを私に教えてくれた。人間は、脳に休息のための時間を与えないまま、複雑で集中力を要する作業をしていると、認知の疲労を起こす。脳の限られたリソースが使い果たされ、パフォーマンスが低下してしまうのだ。
研究により、前頭葉(人間の最高レベルの認知機能と実行機能をつかさどる部位)は、とりわけ認知の疲労に弱いことがわかっている。前頭葉の実行機能がなければ、人は複雑なことを効果的、また効率的に計画したり、実際に行ったりすることができない。
ガザレイ博士が説いたように、認知能力の低下から真に回復するための現在知られている唯一の方法は、「脳を休ませること」だと、研究も示している。
根本的な問題解決などに欠かせない要素は、現在の思考と過去の経験を結びつける能力だが、これには前頭葉の実行領域と脳の記憶領域のやりとりが必要になる。オープンな思考の時間がないと、こうした領域同士のやりとりは、精神疲労や認知の過負荷によって、ともすれば損なわれてしまう。
だが、日常のルーティンにホワイトスペースを組み込むと、前頭葉の再編成と再活性化が促され、ニューラル処理の速度が増して生産性や創造性がアップする。安静時に脳のMRIスキャンを撮ると、脳内のデフォルト・モード・ネットワーク(脳の活動の統括センター)が、驚くほど複雑に活動しているのが見てとれるはずだ。この活動は、洞察力、つまり物事の本質を見抜く力や、記憶力や創造力と関係している。
したがって、脳が疲れているときに戦略的小休止をとれば、新鮮な視野を得るのに必要な記憶の関連づけをするチャンスを、過負荷状態の脳に与えられる。これが創造性を高めてくれる。マラソンのきつい下り坂で給水したときのように、視界が一気にクリアになるのだ。