職場で健康を保つのは、ますます難しくなっている。
ジョエル・ゴー、ジェフリー・フェファー、ステファノス・ゼニオスによる最近の研究によれば、長時間労働や雇用不安、ワークライフ・バランスが取れていないなど、仕事のストレスは毎年最低でも12万件の死亡につながっており、医療費は最大1900億ドルまで膨らんでいることが明らかになった。
言い換えれば、仕事のせいで人びとが死んでいるのだ。
だが幸運なことに、笑いは強力な絶縁体となる。
みなさんもご存じのとおり、笑うことによって、コルチゾール値が抑えられるのだ。コルチゾール値の上昇は体の警報システムであり、不安やうつ病のリスク増大とも関連がある。
さらに、ユーモアはストレス緩和に役立つだけでなく、極度の苦痛に対処するのにも役立つ。
ダッチャー・ケルトナーとジョージ・ボナーノによる研究では、死別のプロセスにおける笑いの効果を調査した。6カ月以内にパートナーや家族を亡くした40名の参加者たちは、死別した相手との関係について語ってください、と指示された。
研究者たちがインタビュー録画を見直したところ、亡くなった相手のことを語りながら本物の笑顔を見せた人たちは、インタビュー後に実施したアンケート調査の結果、見せかけの笑顔を浮かべた人たちや、笑顔をまったく見せなかった人たちに比べて、怒りのレベルが80%低く、苦痛のレベルが35%低いことがわかった。
さらに、本物の笑顔を見せた人たちは、前向きな感情を覚えることが有意に多く、いま現在の人間関係に対する満足度も高いことがわかった。
もちろん、このような実験結果は相関的なものだが、最近では因果関係への理解を深めようとする研究が行われている。
シェリー・クロフォードとネリーナ・カルタビアーノによる研究では、8週間のプログラムを開発し、日常生活にユーモアを取り入れて楽しむための具体的なスキルを参加者たちに教えた。
毎週、インストラクターが少人数のグループに対し、1時間の学習モジュールによって、ユーモアのスキルをひとつ教えるのだ。
8週間後、さまざまなユーモアのスキルを学んだグループの人たちは、うつ状態の症状が減って、ストレスが和らぎ、ポジティブな感情のほうがネガティブな感情よりも増えたと報告した。さらに、感情をコントロールできるという認識も有意に高くなっていた。
笑いは最良の薬だ(実際には、薬がいちばん効くだろう。だが笑いは、大量の薬を必要とする状態を避けるのに役立つ)。
笑うと血流が増え、筋肉の緊張が緩むだけでなく、心疾患にかかわる動脈壁硬化が緩和されるなど、生理学的な効果がもたらされる。
映画『パッチ・アダムス』から着想を得た、マーティン・ブルーチェらによる研究では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者たちが道化師によるショーを楽しんだところ、肺機能の向上が確認された。
嘘のようで、本当の話なのだ。
それでも、納得できない?
では、永遠に生きられるとしたら?
まあ、永遠は言いすぎだが、ユーモアのセンスと寿命の長さには相関関係があることが、実際に研究によって明らかになっている。ノルウェー科学技術大学による5万人超を対象とした15年間の縦断研究によって、ユーモアのセンスが豊かな人びとは、男女ともに、持病があったり感染症にかかったりしても、長生きすることが明らかになった。
具体的には、ユーモアをよく使う女性たちは、あらゆる原因による死亡リスクが48%低く、心臓病による死亡リスクが73%低く、感染症による死亡リスクが83%低いことがわかった。
いっぽう、ユーモアをよく使う男性たちは、感染症による死亡リスクが74%低いことが明らかになった。
これでおわかりだろう。ユーモアは私たちのパワーを高めるだけでなく、まわりの人たちもうきうきした気分にさせる。
ユーモアは人と人との有意義なつながりを育み、創造力を解き放ち、緊迫した状況においてもストレスを和らげる。そして私たちが、人生の浮き沈みを乗り越え、成長するために役立つのだ。
(翻訳:神崎朗子)