「誰も笑わないシーンとした職場」が抱える大問題

最近職場で笑っていない、誰かが笑っているのも見かけないという場合は、要注意(写真:mits/PIXTA)
日本の企業はなによりも「真面目」であることを大切にする。ところが、それとは対照的に、アップルやピクサー、グーグルのような企業は、なによりも「ユーモア」を大切にすることで、大きく成長している。
スタンフォード大学ビジネススクール教授のジェニファー・アーカー氏と、同校講師でエグゼクティブ・コーチのナオミ・バグドナス氏によれば、ユーモアにあふれる職場は心理的安全性をもたらし、信頼関係を築き、社員のやる気を高め、創造性を育むという。
今回、日本語版が9月に刊行された『ユーモアは最強の武器である』について、『「ウケる」は最強のビジネススキルである。』の著者の中北朋宏氏に話を聞いた。3回にわたってお届けする。

笑いは交渉を有利に導く

『ユーモアは最強の武器である:スタンフォード大学ビジネススクール人気講義』は、弊社と近い価値観であり、共感できることが多い1冊でした。

『ユーモアは最強の武器である:スタンフォード大学ビジネススクール人気講義』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

人材コンサルのロジックと掛け合わせて、260社以上に導入してきた弊社の理論は、まさに本書に書かれているような内容から得られたものです。

いま、「誰と働くか」は、とても重要になっています。自分の職場だけでなく、お客さんから見ても同じです。月に1度、1時間の商談の時間を誰と過ごしたいか。そこでユーモアがあると、「一緒に働きたい」と選ばれる効果が高まると思います。

笑いは交渉を有利に導くものであり、美術品の購入価格の交渉で、平均18%高い金額がついたと書かれていましたが、弊社にも研究データがあります。

営業パーソン向けに、お客様の心をつかむ「アイスブレイク」という手法をお伝えしていますが、この手法を伝えた人と、伝えていない人、それぞれ100人に営業に出てもらうと、伝えた営業担当者の成約率が、平均9ポイント高くなったのです。

ユーモアを面白がれるかどうか

笑いには、信頼関係を構築する力がありますよね。みんなが持っている「面白い」という感情で、人と人とを結びつけるのがユーモアのパワーだと思います。

弊社では、アイスブレイク(つかみ)として、B5サイズの巨大な名刺を出しています。

下にあるのは普通サイズの名刺入れ。中北氏から巨大な名刺を見せられると、たいていの人は笑ってしまうだろう(筆者提供)

「デカッ」となりますよね。名刺入れにも入らない大きな名刺ですが、ここでリアクションがない人は、基本的にユーモアが通じませんので、弊社とお取引する可能性が低いことがうかがえます。

ですので、こちらから積極的に営業をすることを避けます。すると、効率が上がり、巨大名刺を使用していなかった時期よりも、受注率が2.5倍ぐらいにまで上がりました。ユーモアは、相手の選定基準にもなりうるわけです。

ユーモアを面白がれるかどうかも大事ということですね。本書でいう「陽気のマインドセット」です。しかし、日本のほとんどの企業には、ユーモアを感じる場面が少ないです。

僕は、2012年にお笑い芸人から転職し、人事のコンサル会社に入りましたが、そのときに強い違和感を感じました。会議でボケてみたら、怒られたのです。それまでは、ボケて褒められていましたから、びっくりしました(笑)。

その後、コンサルとしていろんな会社の会議に参加しましたが、ふざけている人はいませんでした。そういう人は、「仕事ができない奴」というレッテルを貼られてしまう傾向があります。