議論のない会議は「リーダーの責任」である理由

プロジェクトが炎上する際、「会議に議論がないことが多い」と筆者は指摘します(写真:EKAKI/PIXTA)
大炎上中のプロジェクトに配置されてしまった……。
IT業界において、当初の計画や予算どおりに作業が進まず、納期までの達成が不可能になった事態を指す「炎上」。これまでトラブル対応の書籍や研修は存在しませんでしたが、IT業界で豊富な経験を持ち、実際に数々の炎上プロジェクトを解決、ゴールに導いてきた木部智之さんは、「トラブルの火消しにもセオリーはある」と話します。
新著『プロジェクトのトラブル解決大全 小さな問題から大炎上まで使える「プロの火消し術86」』から一部抜粋・再構成してお届けします。

議論されていないプロジェクトは失敗する

必要な定例会議は持続することが重要ですが、会議の内容も重要です。会議の内容というと、アジェンダなども大切ですが、ここではそもそも論のところ、「その会議では議論がなされているか」という点にフォーカスします。

炎上しているプロジェクトは、会議で建設的な議論がなされていない可能性が高いです。「議論されているかどうか」という視点で、いくつかの会議をチェックしてみてください。一方的な報告や指示、情報共有のみであれば、その会議は健全ではありません。

プロジェクトというものは、いろいろな人が関わり、それぞれの考えがあります。同じ事実に対しても、役割やポジションによって見方や捉え方が違います。それらのどれかが絶対的に正しい、ということはありません。

議論がなされない、ということは、それらの意見・考えを戦わせていない、ということです。本来、さまざまな意見、考えをぶつけ合ってプロジェクトとしての最適解を導く、これが会議です。

議論されないのは、会議のリーダーのせい

会議で議論がなされないいちばんの理由は、その会議のリーダーにあります。人の意見を聞かなかったり、議論が起きても自分の意見だけを押し通したりしてきた結果です。プロジェクトメンバーは、次第に自らの意見を発することを諦めていきます。

炎上したプロジェクトのほとんどはこのような状態になっています。なぜなら、議論が活発に行われるプロジェクトは課題がその場その場で解決されるので、炎上するまでには至らないからです。

あなたの炎上プロジェクトに議論がないならば、それは議論が起きる方向に変えなければいけません。まずはマインドチェンジです。会議は議論をする場である、ということを発信します。とはいっても、それですぐには変わらないので、ファシリテートをするなかで、メンバーに意見を求めるように話題を振っていきます。

「ほかに意見はありませんか?」「どう思いますか?」「反対意見はありませんか?」「それに対して、どう思いますか?」と問いかけます。

次第に、メンバーには会議中に考えるクセがついてきます。自分の意見をいわなければいけない、という雰囲気にもなります。それほど時間はかかりません。3~4回の定例でメンバーの意見を求めるようにすれば、自発的に意見を発信するような会議に変わっていきます。

出典:『プロジェクトのトラブル解決大全 小さな問題から大炎上まで使える「プロの火消し術86」』

会議が始まってから「会議のテーマ」を議論したり、その「会議のゴール」が決まっていない状況で会議が始まったりするケースがよくあります。また、議論をするために必要な「準備が十分でない」ことも多いです。

それがどんな会議になるかというと、参加しているほとんどの人が「この会議、ムダだなぁ」と感じる会議になります。

火消しリーダーであるあなたは、このような会議が始まってしまったら開始30秒で終わらせてしまいましょう。「会議をするための十分な準備ができてないから、リスケしよう」といって終わらせてしまうのです。