「35歳以上」で転職すべきかを本気で見極めるコツ

なぜなら、キャリアのオーナーは「自分」です。自分のキャリアに対して決定権を持ち、誰かの意見ではなく自分の意志に従ってキャリアを築いていくこと──つまり「キャリア・オーナーシップ」を持つことが、プロティアン・キャリアの神髄です。転職は、自分が納得して働くための1つの手段にすぎません。プロティアン・キャリアを実践するための1つの方法ではありますが、「転職=プロティアン・キャリア」ではありません。

まずは、世間や誰かの価値観に合わせるのではなく、自分自身の気持ちを軸にキャリアを考えてみてください。自分を前に進められるものは、自分自身の「納得感」しかないのです。この考え方を前提として、転職を迷っているときには次の視点で検討してみましょう。

転職するかどうかを見極めるポイント

会社という組織は、キャリアに関するさまざまな「資本」の宝庫です。この場合の「資本」とは、毎月支払われる給料のことではなく、今の会社で働くことで得られるスキルやネットワークのことを指します。

自分が成長していくために必要なスキルや人間関係を、今の会社で築いていける余地があるかどうか。今の会社で得られる資本を、最大限に活用し切ったかどうか。これが転職するかどうかを見極めるポイントです。

佐藤さんのように異動がきっかけで転職を考え始めた場合だと、次のようなことを客観的に捉え、見極めていく必要があります。

・異動によって、新たなスキルや人間関係といった資本を獲得できるか?
・獲得する資本は、自分の成長につながるのか?

異動がきっかけでなくとも、長期間同じ仕事に携わり、知識やスキルの向上が頭打ちだと感じたり、固定化した人間関係が続いたりすると、「転職」の2文字が頭に浮かぶこともあるでしょう。そうした場合にも、「今の会社で自分が成長できるかどうか」を軸に考え、まだまだ今の会社で獲得したいスキルや築いていきたい人間関係があると判断したなら、どうやってそれを獲得していくのか戦略を練りましょう。

異動願いを出して自ら変化を起こしていったり、新規プロジェクトに立候補したりするなど、今いる会社で獲得できる資本を最大限に活用する方法を考えるのです。

一方、このまま今の会社にいても自分自身の成長につながる要因が見当たらないと判断した場合には、転職してみるのもいいでしょう。転職をすることで、変化に適応する力である「アダプタビリティー」を鍛えることができます。

業界や職種が同じでも、職場が違えば働き方は違います。異なる業界や職種への転職の場合は、さらに変化は大きくなるでしょう。その変化に適応していくことで、「アダプタビリティー」が鍛えられます。転職のパターンは4種類あるので、それぞれの特徴を見ていきましょう。

(1)同業種・同職種への転職

これまでの仕事で得た知識やスキルを活用して転職し、職場だけ変えるパターン。「転職によって何を成し遂げたいのか」「なんのためにその会社に転職するのか」といった明確な目標を持つことが重要です。目標を明確にしたうえで転職しないと、「せっかく転職したのに想像したような変化が起こらなかった」という事態に陥り、結果としてまた転職を繰り返してしまうので、注意が必要です。

(2)同業種・異職種への転職

同じ業界ではあるけれど、職種を変えて転職するパターン。業界特有の知識は生かせるものの、新たに挑戦する職種の専門的な知識やスキルを、転職後に形成していく必要があります。
 
(3)異業種・同職種への転職

職種は変えずに、これまでとは違う業界に飛び込むパターン。違う業界の知識や文化などを吸収していく必要はありますが、これまで蓄積してきたスキルや知識、同職種のネットワークなどを生かしながら、さらに専門的な経験を積み上げていくことができます。
 
(4)異業種・異職種への転職

業界も職種もまったく異なる分野にチャレンジするパターン。これまでの経験を転用できないので、知識もスキルもゼロから獲得していく必要があります。最初のうちは苦労しますが、チャレンジをして乗り越えることができれば、その分、知識もスキルも人間関係も広がり、変化適応力も鍛えることができます。

転職する・しないにかかわらず、考えるべき基準は…

『キャリアの悩みを解決する13のシンプルな方法 キャリア・ワークアウト』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

今の会社に残るにしても、転職するにしても、「自分が成長できるか」「どんな知識やスキル、ネットワークを増やしていきたいのか」を基準にして考えることが大切です。

とはいえ、転職すべきかどうかすぐに答えは出ないかもしれませんね。そこで取り組んでほしいのが、次のワークアウトです。

このワークアウトを実践すれば……。ぜひやってみてください。