13日、女王の棺が飛行機でロンドンまで運ばれ、バッキンガム宮殿に安置され、14日、あるいは15日から遺体の一般公開が始まる。棺は議会があるウェストミンスター宮殿のウェストミンスターホールに置かれる。何万人もの人々が飾り台を載せる棺の前を通り過ぎながら、敬意を表する。棺の上には女王がかぶっていた王冠が置かれるという。王室のメンバーも足を運ぶ予定だ。
女王の国葬は、19日午前11時からウェストミンスター寺院で行われる。この日は休日となる。寺院は約2000人が収容でき、世界中からやってくる政治家や王室関係者が出席すると言われている。
エリザベス女王在位中には、イギリスでは15人が首相を務めたが、そのうち存命の首相経験者が参列するとみられるほか、日本からは天皇陛下が、アメリカからはジョー・バイデン大統領が参列する意向を示しているとされる。
この後、棺はウィンザー城のセント・ジョージ礼拝所まで運ばれ、埋葬儀式が行われるが、これも中継予定だ。王室のメンバーだけの私的儀式がこれに続く。
女王の遺体は最終的に父親の名前が付いたジョージ6世記念礼拝堂に埋葬される。ここには両親も埋葬され、妹のマーガレット王女の遺体の灰も埋葬されている。
女王の夫フィリップ殿下は昨年4月、ウィンザー城で亡くなっている。享年99歳。73年余、連れ添ったパートナーだった。死後、その遺体は礼拝堂の地下にある「ロイヤル・ボールト」に保管されていたが、女王の死に伴い、礼拝堂内に移動される。2人の遺体は同じ場所で眠ることになる。
女王の死を「国全体で追悼する」。これがイギリス流である。
国を挙げての葬式は、政治家の場合はめったにない。イギリスに相当の功績を与えた人物で、かつ議会の承認を経て、国葬が可能になる。最後にイギリスの政治家が国葬となったのは、1965年、チャーチル元首相である。第2次大戦中、国民を鼓舞し、陣頭指揮をしながら勝利を実現させた名宰相だった。チャーチル元首相の国葬には、エリザベス女王のほか、王室メンバーが参列している。
政治家以外では、物理学者で数学者のアイザック・ニュートン氏、アメリカ独立戦争に参加しナポレオンと戦ったイギリス海軍の英雄、ホレーショー・ネルソン堤監、ウェリントン公爵の葬儀が国葬として行われた。
振り返ってみると、父の急死によって、25歳でその後を継いだエリザベス女王は、21歳の時に「すべてを国民とイギリスのために捧げる」と宣言していたが、70年の治世中、まさにこの精神がにじみ出たのが公務の数々だった。
メディアインタビューには一切応じず、黙々と女王という「仕事」に専念した。その生真面目さは「禁欲的」とも評された。王室を批判する人でさえも、女王の生涯を通じての献身度には敬意を表さざるを得ないだろう。
即時に情報が拡散するこの時代に、数日間もたった1人の死のために国の行事が続くというのは大袈裟とも、古めかしいとも思えるが、女王の人生に最大の敬意を払い、国民が1つになる機会とも言える。