もうひとつ、人によって性格が異なる特徴として、「特性不安」が挙げられる。おそらくあなたの知り合いにも、ほかの人より不安感の強い人がいるだろう。
というよりも、人によっては、不安感が強いのがその人の性格の安定した大きな特徴なのだ――これを特性不安という。
特性不安が強い人は、さまざまな状況に脅威や危険を見いだしやすい。他人には脅威に思えないようなことも脅威に感じるし、一般に不安を生みだす(実際に脅威がある)状況では、この特性が低い人よりも強い不安を覚えやすい。
このように性格の一部として不安感を覚えやすい場合、注意をどこに向けるかという方法にも影響が及ぶし、出来事に対して運を説明に利用する方法やタイミングも変わってくる。
神経科学者のソニア・ビショップは、特性不安が強い人は弱い人と比べて、背外側前頭前野の活動がきわめて弱いことに気づいた。
前頭葉の機能のこの違いは、完全に集中しなくてもこなせる課題に被験者が取り組んでいる際に顕著に観察された。
目の前の課題に完全に集中していない場合、不安感がきわめて強い人たちは、それほど不安感が強くない人と比べて、無関係な刺激に気が散りやすかった。
特性不安が強い人は、背外側前頭前野の活動が不活発で、なにか気が散ることが起こると、目の前の課題から注意をそらしやすかったのだ。
ビショップは、前頭前野の活動が不活発だからこそ、臨床での治療が必要なほどの不安感を訴える患者は集中することが困難なのだろうと示唆している。
もし、幸運であるためには注意力を効率よく采配しなければならないのなら、ビショップの研究結果によれば、幸運な人は不運な人よりも不安感を覚えていないうえ、前頭前野の注意制御システムをうまく活用できることになる。
(翻訳:栗木さつき)