このときどちらの態度をとるにしても、「仮想敵」をもつと、チームが一つになりやすくなります。仮想敵はもちろん「問題」や「課題」それ自体であり、特定の人物や組織ではありませんので行き過ぎは禁物です。
「仮想敵」に勝ったとき、チームは一段高いレベルで団結していることでしょう 。
リーダーは間違わないほうがいいですが、リーダーも人間ですから、もちろん間違うことはあります。
このミスがチームにとって致命的なものでなければ、そのときはメンバーの力を借りて修正すればいいだけの話。むしろこのとき「自分は間違っていない」と主張し続けるほうが、傷は大きくなります(たとえその主張が論理的であっても、です)。
修正が必要なときは、まず自分が間違った判断をしたことを素直に認めることです。
これもリーダーにとっては古くて新しいテーマで、中国古典の『論語』にも私の知る限りで、4カ所にこれと同じ主張が説かれています。
では、なぜ間違いを認めることが重要なのでしょうか。
メンバーは自尊心が先に立つ人よりも、正直な人についていきたいと感じるからです。さらには体面を保つためにミスを認めずあれこれ言い訳することは、その後の修正を遅れさせます。ミスを認めなければそこにとどまりますが、認めることで次へのステップがはじまるわけです。
ただし、一度ミスを認めて謝罪したあとは、むやみに何度も謝罪し続けないことです。
「さっきはごめんな」「本当に悪いと思っている」などと連呼することは、あなたを「いい人」にすることはあっても、「ついていきたいリーダー」にする効果はありません。
メンバーに「申し訳ない」という気持ちがあるのはわかりますが、やるべき修正の作業に集中し、その作業を完了させたあと、協力してくれたメンバーにお礼とともに伝えるときまで、謝罪の言葉はとっておきましょう。
法律や常識など、客観的に考えて自分たちの非が明らかなトラブルの場合、リーダーはチームを代表して謝罪する必要があります。
でも、交渉や商談において、主張の違いが原因のトラブルのときは、たとえクライアントからの苦情であっても、リーダーは安易に謝ってはいけません。
あなたはリーダーです。 リーダーの言葉はチームを代表するものです。メンバーが、相手と交渉して一生懸命トラブルを解決しようとしているなか、リーダーが相手側に立つような発言をしてはならないのです。
たとえば、以下の通りです。
交渉相手「これ、高いよ。もうちょっとなんとかならないの?」
メンバー「いえ、必ずしもそうではありません。今回、付加価値として……」
リーダー「申し訳ございません。早速再見積もりしてまいります」
となったら、メンバーは立つ瀬がありません。「どっちの味方なんですか」ということになります。
苦情に対しても、
交渉相手「あなたのチームの××さん、おかしいよ。まったく対応してくれない」
リーダー「本人も考えがあってのことだと思います。確認して連絡させます」
と切り返し、安易な謝罪は入れないようにすることです。もちろん、個別に本人と会話して、確認します。
もし、交渉相手の気がおさまらない状況にまでいたっている場合は、事前に「演じるからな」と申し合わせ、謝罪に行って相手を落ち着かせるなどの措置をとれば、メンバーを売らずにその場を収めることも可能です。
コロナ禍を経て、オンライン会議が日常的になりました。
会議以外のやりとりも、職場での気軽な雑談が減ったぶん、Slackなどのオープンなチャットによる会話が増加しています。そして、それは、日々の打ち合わせのやりとりや、ちょっとした会話の内容も映像や文書などで履歴が残りやすい、ということでもあります。