彼らは、厳しい訓練や規律があっても、「へ~、面白い!」と柔軟。「自分はこうだ!」といった考えの固さがなく、最適解を状況によって変えられる人でもあるという。
一方、「弱い自分を変えたくて自衛隊に入隊した」という人は、自分はダメというところからスタートしているので、自分で自分を追い込む傾向にあった。
幹部自衛官としてエリートコースを歩んでいたぱやぱやくん。「メンタルはそんなに強くならなかった」とハッキリ語るが、どんな人が厳しい環境の中でもたくましく生き残っていたのか。一方、心や体を壊してしまった人や環境とはどんなものなのか。
「同僚になめられたから強くあらねば」「仕事がうまくいかないけど、もっと気持ちを強く持たねば」自分を鼓舞して奮起することはあるだろう。しかし、「強くあらねば」の前には否定の言葉が入り、自分で自分を追いつめてしまいがちだ。
「たとえば、毎日14時間以上弱音も吐かずに働き続けながら、上司から怒られて、同僚ともうまくいかない。心が折れて集中力を欠き、ミスが増える。焦りやプレッシャーを感じながら、それでも強くあらねばと思うのは、かなり精神的にきついと思うんです。
できない自分を責めた揚げ句、結果的にうつや適応障害になった人。昨日までニコニコと働いていたのに、突然職場に来なくなった人もいました」
入社から10年、20年と経験年数が上がったとき。上司から期待され、後輩や部下には突き上げられる。入社当時は仕事ができなくて当たり前、何かあっても弱音を吐ける。しかし、経験を積んでいくと、人に情けない姿を見せられなくなってしまう人は少なくない。
また、もともとメンタルが弱い状態で入ってきた人も、自分は強くなったと思い込んでしまい、自分の弱さを認めにくくなる人もいる。自信が命取りになってしまうこともあるという。
自衛隊では、「つらい環境は、スケープゴートが生まれやすいので指揮官は注意しろ」と言われるそうだ。
スケープゴートとは、ある集団に属する人が、その集団の正当性と力を維持するために、特定の人を悪者にして攻撃する現象をさす。
たとえば災害派遣や海外派遣など高ストレスな現場では不満がたまり、特定の誰かを攻撃して解消しようとするような心理が生まれることがある。これは、自衛隊組織が悪いからというより、ストレスレベルが高い組織全般に見られる行為だ。
また、人を攻撃する人たちは自信や余裕がない人か、共感性が低い人たちだった。
まず、自信がない人は、役職や地位に人生の拠り所を感じており、立場の強さ=自分の強さと勘違いしたりする。一方で、自分の能力には自信がなく、その心の不完全さを、部下をいじめることで満たしていたという。
では、そうした理不尽な試練にどう対応すればいいのか。後編記事ではその点などについて紹介していく。