次に、上司から理不尽な対応をされたときを例に挙げてみます。
「ほかにもたくさん仕事を抱えているのに、いきなり大量の仕事を振られる」
「まったく得意ではない分野の仕事を、ほぼ丸投げされる」
「『君ならできるよ』と言われて、無理な日程のスケジュールを組まされる」
など、職場で上司から理不尽な仕事を振られることもあります。そんなとき、「なぜこっちの事情をわかってくれないのだろう」という悲しみが、怒りに変わってしまうことも少なくありません。
怒りを感じたとき、思わずその場で反論したくなってしまうかもしれませんが、そこはぐっとこらえましょう。なぜなら、怒りを感じたときに議論すると、「なんでわかってくれないんですか!」「私の事情も考えてください!」などと、どうしても発言が感情的になってしまうからです。どちらかが感情をぶちまければ、当然、相手も感情的になるので、いつまでたっても議論が進まず、悪い結果にしかなりません。
そんな悪い結果を招かないためにも、怒りを感じたときに取るべき最もいい手段。それは、「その場を離れて、一度冷静になること」です。怒りに一度火が付いてしまうと、自分ではなかなか抑えられません。そこで、身を置く場所を強制的に変えてみると、少し怒りがやわらぎ、冷静さが戻ってくるはずです。
しかし、上司と対面しているときに、いきなりその場を離れるわけにはいかないでしょう。そこで、その場を離れる代わりにやってほしいのが「100から0まで、数を減らして数えていく」というテクニックです。
普通に数を数えるのとは違い、100、99、98、97、96、95……と、数を反対に数えていく逆算は、ある程度集中していないと数えられません。少し頭を使う別の作業に集中することで、自分の抱えている怒りから意識が離れ、冷静になれるのです。逆算に慣れてしまったら、自分の好きなアイドルグループのメンバーの名前を順番に思い出してもいいし、2桁以上の足し算や引き算を暗算するのもいいでしょう。
また、上司から電話で理不尽なことを言われた場合は、すみやかに鏡の前に移動するのもおすすめです。鏡に映る自分に向かって話しかけるようにすると、客観的な気持ちになれて、上司から追い込まれる感覚が薄れていくはずです。冷静さを取り戻すためにも、電話越しに「この会話は怒りを感じてしまいそうだ」「相手に対して怒ってしまいそうだ」と感じたときは、鏡の前に立ってみてください。
少し怒りがおさまったなら、次は「できるだけ具体的に、なぜ自分が理不尽に思ったのか」を伝えましょう。感情論で相手に事情を伝えても、「言い訳せずにやれ!」と相手から理解してもらえず、言い合いになってしまうため、解決から遠のいてしまいます。
「このスケジュールではその仕事は難しいです」
「私ひとりでは知識不足の部分もあるかもしれないので、課長にもサポートに入っていただけると嬉しいです」
「もう少し丁寧に業務内容を説明してもらえますか?」
などと、具体的に自分の事情を伝えることが、ビジネスパーソンとしてのマナーです。
仕事の質が落ちれば、組織全体の動きも鈍ってしまいます。だからこそ、上司には感情論ではなく、生産的な仕事の進め方を相談すれば、きっと理解が得られるはずです。
ぜひ、ちょっとした回避術を活用し、怒りやイライラを感じたときに役立てていただければ幸いです。