超ヒット韓国の弁護士ドラマに向けられた熱視線

NetflixのTV番組TOP10リスト(英語以外)にランクインした国数は世界50か国近くに上る。今最も話題の韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』はNetflixで独占配信中(画像:Netflix)
Netflix、Amazon プライム・ビデオ、Huluなど、気づけば世の中にあふれているネット動画配信サービス。時流に乗って利用してみたいけれど、「何を見たらいいかわからない」「配信のオリジナル番組は本当に面白いの?」という読者も多いのではないでしょうか。本記事ではそんな迷える読者のために、テレビ業界に詳しい長谷川朋子氏が「今見るべきネット動画」とその魅力を解説します。

主人公設定は「グッド・ドクター」と同じ?

今、最も話題の韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」に熱い視線が注がれています。主人公の挨拶を真似る動画がTikTokで流行り、Netflixが独占配信する世界の約50か国でTOP10入りを果たす快進撃に加えて、新たなビジネスモデルの流れまで作り出しているからです。なぜ世界でヒットし、何がいったい新しいのか。解説していきます。

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一見すると、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は超定番の法廷ドラマです。発達障害の一種である自閉スペクトラム症を抱える主人公設定は日本でもリメイクされた「グッド・ドクター」を思い起こさせます。韓国ドラマファンでなければ、見逃されそうな作品ですが、登場人物の成長の描き方からエピソードごとの着地点まで、「人間味」で勝負する作品であることが勢いよく伝わってきます。

第1話から主人公ウ・ヨンウの天才的な頭脳と自閉スペクトラム症を自覚するキャラクターに惹き込まれていきます。父子家庭で育ち、大手法律事務所の新人弁護士として働き始めた彼女の姿に特別感を覚えるよりむしろ、思わず応援したくなる共感性を生み出しているからです。

演じるのは子役出身女優のパク・ウンビンです。演技派のパクにとっても自閉スペクトラム症というのは難しい役柄だったようですが、綿密なリサーチを重ねて臨み、偏見を持たせないキャラクター作りにこだわっています。「ウ・ヨンウの“心”に焦点を当て、自由に表現するために、あらゆる可能性を受け入れました」と、本人も語っています。

劇中で繰り返される「私の名前は逆から読んでもウ・ヨンウ。キツツキ、トマト、スイス……」という自己紹介の台詞や、事件解決の糸口を見つけた瞬間にフワッと髪がなびき、彼女の大好きなクジラが現れるファンタジックなお馴染みのシーンに、回が進めば進むほど愛着が湧くはずです。

【2022年8月14日19時35分追記】初出時、生物の名称に誤りがあったため、修正しました。

グローバルTOP10リストで2週連続1位

主人公を取り巻く仲間においても、人間性を繊細に描いています。最初は戸惑いながらも次第にウ・ヨンウの味方になっていく先輩弁護士チョン・ミョンソク(カン・ギヨン)や、ウ・ヨンウと惹かれ合っていくイ・ジュノ(カン・テオ)、ウ・ヨンウの理解者の1人である同僚のチェ・スヨン(ハ・ユンギョン)などそれぞれ魅力的な人物像です。人と人との密接な関わり合いからも、優しい世界観を作り出しているのです。

ウ・ヨンウと互いに惹かれ合っていくイ・ジュノ役のカン・テオはアイドルとしても活動する(画像:Netflix)

かと言って、甘ったるいだけのドラマではありません。ウ・ヨンウに偏見や悪意を向ける人物もいれば、扱う事件では強者と弱者の対立構造を見せながら、社会の現実的な側面に触れています。そのバランスが絶妙です。甘すぎず、重たすぎない。話が進むと、恋愛要素やウ・ヨンウの出生にまつわるワケあり事情が加わり、場面によって偏りはありますが、総じてブレてはいない印象です。