自信満々な人ほど、実は信頼されない深い理由

心の底で相手はあなたをどう見ている?(写真:venuestock/gettyimages)
プレゼンや商談でオドオドしながら話す自信がない人を見ると、つい不安を覚えてしまう。反対に、知識をひけらかしながら自信たっぷりに話す人を見ると、不快になってくる。
このたび上梓された『マッピング思考:人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』の著者ジュリア・ガレフによれば、どちらも「知識に対する自信」が関係している。実は、自信にはもう1つあって、他者に信頼されるためにはこちらのほうが影響は大きい。「自信を持つこと」について多くの人が知らない「もう1つの自信」の効用を解き明かす。

ネガティブな話し方で成功したベゾス

アマゾンを設立する前のジェフ・ベゾスは、自分のビジネスアイデアの成功率を3割程度と見積もっていた。

『マッピング思考:人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこち

投資家に出資を募るとき、その情報はあきらかにネガティブだ。「正直に言えば、失敗すると思います」とみずから告白する起業家に出資する人などいないはずだからだ。

「成功確率3割」という情報をベゾスは投資家には知らせなかったのだろうか。

しかしベゾスは、成功の見込みが薄いと考えていることを隠そうとはしなかった。投資家に売り込みをするときはいつも「あなたが出資した金をすべて失う確率は7割ある。だから、それを覚悟できないかぎりは投資しないでほしい」と伝えていた。

アマゾンがどれだけ成長を続けても、ベゾスはこの会社の未来が不確実であることを正直に語り続けた。アマゾンの市場価値が世界一の企業になろうとしていた2018年秋、ベゾスは全社会議で社員にこう伝えた。

「アマゾンはいつか倒産するだろう。(中略)大企業の寿命はたいてい30年強しかない。100年以上も続くケースは“まれ”だ」

「わからない」を正直に申告するとトク

一般的には、自信がある人ほど、影響力が大きいと思われている。「自信は磁力のように他人を引きつける。誰もが、自信がある人の話に耳を傾け、その人に従おうとし、信頼しようとする」と。

しかし、知的に誠実であるほど、あらゆることに確信を持つのは不可能になる。ジェフ・ベゾスの例が示すように、ちまたにあふれる「自信があれば影響力が高まる」式の定説は、実は正しくない。

「自信」という言葉には、大きく2つの意味が含まれている。

1つは、「知識に対する自信」である。つまり、何が事実かをどれだけ確信しているかということだ。

「彼がうそをついているのは99%間違いない」「これがうまくいくことは保証する」「次の選挙であの政党が勝てるわけがない」といった言葉で使われる自信である。

もう1つは、「対人関係に対する自信」だ。これは「自己肯定感の強さ」の表れだとも言える。人前で堂々と振る舞ったり、集団内に自分の居場所があると感じられたり、「他人が自分の話に耳を傾けてくれている」と実感したりするとき、人はこの自信を感じている。

「知識に対する自信」と「対人関係に対する自信」は、混同されがちである。

たとえばチームを叱咤激励しながら「絶対に成功する」と言っているリーダーのような、両方のタイプの自信を持っている人は想像しやすい。

同じく「えーと、何をすればいいのかよくわからないのですが……」と不安そうに口ごもる、両方のタイプの自信がない人の姿も想像しやすい。

だが、「知識に対する自信」と「対人関係に対する自信」という2つの自信はセットである必要はない。