自信満々な人ほど、実は信頼されない深い理由

笑い声ひとつで出資金を獲得

他人によい印象を与えるには、知っていることを自信たっぷりに示すよりも、ありのままの自分に自信を持つことのほうが重要であるようだ。研究結果もそれを裏づけている。

ある研究では、大学生が小集団に分かれて課題を行い、その様子を動画で撮影した。

その後、研究者は動画のなかの学生の行動を観察して、さまざまな観点から「知識に対する自信」(「自分の考えに自信がある」と何回主張したか、など)と「対人関係に対する自信」(議論にどれだけ参加したか、落ち着いているように見えたか、など)を分析し、数値化した。

次にこの動画を第三者に見せて「それぞれの学生は、どれくらい有能だと思いますか?」と尋ねた。その結果、第三者から有能だと評価された学生ほど「対人関係に対する自信」が高かったことがわかった。

「会話に参加する回数が多い」「しっかりした口調で話す」「声が大きい」「態度が落ち着いている」といったしぐさが見られる学生ほど、有能だと評価された。

これに対し、学生の「知識に対する自信」、すなわち自分の答えに対する確信度や、自分にとって課題がどれだけ簡単か、自分がどれだけ有能か、といった発言は、第三者による有能さの評価には、ほとんど影響を及ぼさなかった。

アマゾンの大成功にも、「知識に対する自信」よりも「対人関係に対する自信」のほうが有能さの評価に影響することをよく物語るエピソードがある。

同社が大きな飛躍を遂げるきっかけになったのは、1996年の春にシリコンバレーの名門ベンチャーキャピタル「クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ(現在のクライナー・パーキンス)」のパートナーであるジョン・ドーアの訪問を受けたことだった。

ドーアはこの会議でアマゾンに大いに触発され、投資の準備を整えた。ドーアは、アマゾンの何に引きつけられたのか? 本人の言葉を借りて説明しよう。

「扉を開けてなかに入ると、大きな笑い声を響かせ、エネルギーに満ちあふれた男が勢いよく階段を下りてきた。その瞬間、私はジェフと一緒にビジネスをしたいと思っていた」

「話の中身」より決定的に重要なこと

「自信のなさを表に出すと自分が不利になる」と考える人は、本人の無知や経験不足から生じる「個人的な知識の不確かさ」と、現実が複雑で予測不可能であることから生じる「現実世界の不確かさ」という、まったく異なる2種類の不確実性を混同している。

前者は当然ながら、その人の専門性の低さを示すものとみなされることが多いが、後者はそうではない。とくに、これから説明する「不確かなことを伝えるための3つのルール」を守っていれば、むしろ「信頼できる人だ」と相手に思ってもらえるのだ。

ルール1 「確実なことが言えない理由」を伝える

現実的にどれくらいの不確実性があるかを理解していない聞き手に確実さを保証するのが非現実的であることを示すことで、あらゆることは100%確実だと言い張る人よりも話に説得力が生まれる。

ルール2 根拠となる数字を示す

「当社と似た企業120社を対象とした調査では、23%が同様の経験をしています」などと情報にもとづいた見積もりを出し、その数字を導いた方法を詳しく説明する。

ルール3 手厚くフォローする

どう行動していいかわからないときは、フォローアップをすることで、相手を安心させることができる。

姿勢や口調などの表面的なことで、他人からの評価が変わるのかとがっかりする人もいるだろう。これは逆に「有能さをアピールするのに、自分の中身を大きく見せる必要はない」とポジティブにとらえることもできる。

「対人関係に対する自信」は、人前で堂々とスピーチをする練習をしたり、服装や身だしなみを整えたり、姿勢をよくしたりすることで高められる。しかも、自分の能力を犠牲にしなくてもいいのだ。