若者のデート離れを加速させる「ゼロリスク志向」

若者がデートをしないのは、「自分に自信がないから」だと指摘する金間大介氏。その背景とは――(写真:花咲かずなり/PIXTA)
「20代独身男性の4割がデート経験なし」「30代は4人に1人が結婚願望なし」「婚姻は戦後最少」――。6月14日に公表された内閣府『令和4年版男女共同参画白書』は大きな話題を読んだ。
新著『先生、どうか皆の前でほめないで下さい――いい子症候群の若者たち』が話題の金間大介氏は、「デートしないのは、自分に自信がないから」だと指摘する。「彼らにとって恋愛は、メンタルを不安定にするリスク要因そのもの。自分で決められないという性向も、恋愛には不向き」とも。その背景には、恐怖心にも似た、人の感情に対する強い心理が関係しているというのだが――。

20代男性の65.8%は妻や恋人がおらず、39.8%はデートした人数0人。20代女性も似た傾向にあり、51.4%に夫や恋人がおらず、25.1%がデート未経験――。6月14日に公表された内閣府の『令和4年版男女共同参画白書』が大きな話題を呼んでいる。

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なぜ、今の若者はデートや恋愛に対し、ここまで消極的なのか。

白書の公表以降、各種メディアでなされてきた議論は、次の4点にまとめられる。①経済力の低迷(特に男性の)、②恋愛や結婚に興味のない人の増加、③ひとり時間の充実、④出会いの減少、だ。

私は、これらの解釈にはある程度同意しつつも、やや表面的と感じる。むしろその根底に、今の若者における「変なこと言って空気を乱したらどうしよう」「ズレた提案をして後で自分のせいにされたらどうしよう」という、人の感情に対する強い恐怖心が作用しているのではないかと思う。

失敗すると思い込み、最初から「デートしない」

今の若者の多くは、目立ちたくない、100人のうちの1人でいたい、自分で決めたくない、誰かが決めたことに従っていたい、(自分に対する)人の気持ち・感情が怖い、といった心理的特徴を有していて、私は彼らを「いい子症候群」と称し、その深層心理の可視化に努めてきた。

なぜ、彼らはそこまで自分に向けられた他人の感情を怖がり、空気に従おうとするのか。

それは、自分に自信がないからだ。自分に自信がないから、自分に向けられた人の気持ちに過敏になり、それをちょっとでも想像しただけで強い緊張が走る。

自分に自信がないから、100人の中の1人として埋もれていたいと願い、自分に自信がないから、ひたすらメンタルの安定を求め、微細なリスクすらも取らないゼロリスク志向へと突き進む……。

自分が提案したお店へご飯を食べに行ったとしたら…

そんな心理状態では、デートどころではない。いい子症候群の若者たちにとって、デートや恋愛は、メンタルを不安定にするリスクの塊そのものだ。たとえば、仮に自分が提案したお店へご飯を食べに行ったとしよう。万が一、そのお店の雰囲気が悪かったら、もう気まずくて息もできない。ご飯の味より申し訳なさで頭がいっぱいだ。さらにそんなとき、相手が「別にいつも行く○○(チェーン店)でいいよ」なんて言ってくれようものなら、そんな神レベルの素敵な人が自分のことを好きになるはずはないので、もうデート失敗確定。今後、100年間は異性と食事には行きません。

あるいは、レンタカーを借りてドライブでも行ってみようか。でも万が一、行き場所が定まらず、「ここさっきも通ったな……」とか思われたら、もうそんな空気の中じゃ息もできない。何とか窒息死だけは免れたとしても、その心の声がトラウマすぎて、やはりデート失敗確定。今後100年間、自分からドライブには誘いません。