例えば、「昔は深夜残業が当たり前で大変だった」「こうやって苦労して成長した」というエピソード。上司はただの苦労話をしているつもりかもしれないが、ワークライフバランスを重視している現代の若者が聞いても、共感どころか「この上司は残業を厭わない人なんだ」と引いている可能性がある。
効率のよい就活を経験した2022年卒であればなおさら。意味のない(感じられない)ことに時間やお金を費やすことはナンセンスだという彼らの価値観を理解せず、一方的に話をしても、本音のところの信頼関係は一向に築かれない(しかも、本音でどう思ったかは、上司側には話してくれない)。
他にも、SDGsへの関心は近年の就職活動におけるポイントにもなっている。例えばジェンダーの問題など、無遠慮な自己開示をすると、最悪ハラスメントに該当する可能性すらある。部下が自由に発言できる環境はつくるべきだが、上司は自分の発言が与える影響を踏まえ、今の価値観に合わせて話すことを一定意識すべきだろう。
このような、新卒の傾向は、来年以降も続いていくことが予想される。最新のデジタルツールを自由に使いこなし、従来の常識にとらわれず変化していける彼ら。安定志向で地に足のついた仕事がしたいと願う一方で、社会課題への関心の高さは頼もしい限り。とはいえ、まだまだ社会に出たばかりで発展途上。彼らの可能性を広げていくのは他ならぬ上司のみなさまだ。とはいえ、人事や組織の担当者も上司側に丸投げするのではなく、その前提で、上司側の支援も行うことが求められている。
今回論じた内容で、この世代の個性に配慮するのは最低限必要だが、とはいえ、いちばん大事なのは「新人」と一括りにせず、1人ひとりの個性に注目して可能性を引き出すことだと筆者は思う。