今の若者に上の世代が絶対取ってはいけない言動

ましてや、オンラインの接点だけで就職先を決めた人もいる世代。会社の雰囲気やカルチャーを入社前に十分理解しきれず、本音では、まだ様子見している段階の新入社員もいる。そんなときに正解のない問いを日常的に投げかけられることほどストレスはない。「目標がない自分はきっとダメなんだ」と自己肯定感をむやみに下げてしまいかねない。

驚くべきことに、「当社への入社動機は?」というオープンな質問を連日重ねられること自体も、きれいに回答できない新入社員の負担になることさえある。

そのため、遠い将来の大きな目標を立てるだけでなく、まずは1カ月、3カ月……と小さな単位で目標を立てて、実現に向けて伴走していくようなマネジメントが効果的だ。

自分なりの目標があることはもちろん素晴らしいが、大きな目標を持つべきだと追い立てるのはNG。上司は部下の今の気持ちを尊重しつつ、小さい成功体験を積みながら、一緒に見つけていくような役割が求められている。

「失敗してもいいから」と挑戦させる、パワハラ

2つめの間違いが、チャレンジのさせ方だ。20代の時期に沢山経験を積んでおくことが大事なのは今も昔も変わらない。指示待ちではなく、自分で考えて主体的に動けるようになってほしい。そのためにも多少の失敗は許容しながらどんどんチャレンジさせたいと考えている上司は多い。読者の皆様の会社にもそういった方はいるのではないだろうか。

ただし、「20代は修業期間だと思って、とにかくぶつかっていけ」と、ほとんど説明もなくノーヒントでチャレンジさせるのは逆効果。どう動いていいかわからず固まってしまう人のほうが多いのだ。最悪の場合、根性論を押し付けてくる上司、育成を放棄したパワハラ上司だと思われてしまうこともある。

上の世代と今の若者では失敗に対する感覚が違う。2022年卒の新入社員に限らず、親にも先生にも怒られたことがない、失敗をしたことがないという若者は増えている。失敗から学んだことがないのに、失敗から学べと言われても恐怖でしかないのだ。

さらに意外な落とし穴は、リモートワークによる影響だ。かつてであれば新人は近くの席で働く先輩たちの動きを見て真似ることができた。手取り足取り教えなくても、明確に指示がなくてもヒントがあった。しかし、リモートワークがすっかり定着した企業では、先輩たちと一緒の空間で働く経験自体が少ない。この変化を前提に、上司は新入社員をケアしたほうがいい。上司としては「失敗してもいいよ」と寛容な気持ちで言ったことだとしても、本人をただ悩ませるだけ。無理難題を押し付けられたと感じて余計に悩んでしまう。

そのため、何か大きなチャレンジをさせたいときでも、小さなタスクに分解して少しずつ仕事を渡し、ある程度の道を示しながら一歩ずつ挑戦させていったほうが、彼らにとって意義のある学びになりやすい。また、この仕事にはどんな意味があるのか、細分化した仕事にも、何が身につくのかと、意義づけを丁寧にあわせていくことも大切だ。

心理的安全性を勘違い?自己開示が行き過ぎて自慢話に

そして、意外と気づかないのが「心理的安全性」の勘違いだ。心理的安全性の高いチームとは、組織の中で自分の考えや気持ちを率直に話せる状態のこと。逆に心理的安全性が低いと、迷惑をかけるのではないか、否定されるのではないかという空気感がチームに流れており、自由に意見が言えない環境がかえってミスを誘発し、組織の成果を小さくしてしまう。それを避けるために、気兼ねなく発言ができるチームをつくっていこうという考え方自体は、ここ数年でかなりメジャーになったのではないだろうか。

心理的安全性の高い組織にするために、まず上司が腹を割って話すというのは確かに効果的なアプローチだ。上下の関係にとらわれず、フラットに相互理解を深める意味で、過去の失敗談などを話すこともあるかもしれない。ただし、ここで注意してほしいのが、上司は自己開示をしているつもりで、新入社員からすると過去の武勇伝を聞かされているように感じてしまう可能性があるということ。「俺の時はこうだった。(だからお前たちもこうしろ)」と聞こえているとしたら、逆効果だ。