アイデアが「バカウケする人」の頭の使い方4工程

私は、このアイデアの発想工程を4段階に分けて考えています。

それが、「ナリキリ」「テキシリ」「シロカベ」「ソギキリ」です。4つを合わせて「4つのキメワザ」と私は名付けています。

それでは、この「アイデア生産の4つの工程」である、4つのキメワザをご説明しましょう。

「4つのキメザワ」がアイデア発想のポイント

キメワザ1:ナリキリ

最初に「ナリキリ」です。

アイデアには必ず披露する相手が存在します。広範囲で言えば「消費者」でしょう。狭い範囲では「提案企業」「営業先」「上司」などになるでしょう。

相手を知らずしてヒットを生む、あるいはウケるアイデアを生むことは不可能です。そのためには「相手になりきること」が一番です。それを「ナリキリ」と呼んでいます(参考:アイデアが「ウケる人」「スベる人」の決定的な差)。

キメワザ2:テキシリ

次に「テキシリ」です。

アイデアの世界は、勝負の世界でもあります。ウケることはすなわち、他のアイデア=敵に勝つことでもあるのです。勝つためには他のアイデアを徹底的に知り尽くすことが大切です。

「テキ」とは「誰でも考えそうな凡庸なアイデア」を指します。凡庸なアイデアはそのまま使うことはできませんが、発想の基準となります。それに手を加えたり、ズラしたり、ひっくり返したりすることでアイデアが生まれます。これが「テキシリ」です。

キメワザ3:シロカベ

3番目が「シロカベ」です。

アイデアが1発で決まることはありません。さまざま思い浮かぶ中からベストなものを選ぶことになります。

そこで、まずは思い浮かぶアイデアをすべて吐き出すことが重要です。通常は、それらを紙に書き出し、壁に貼って全体像を眺めるようにできることが望ましいです。何もない壁に貼りつける、これを「シロカベ」と私は呼んでいます。

キメワザ4:ソギキリ

最後が「ソギキリ」です。

シロカベに張り出した多数のアイデアの中から、ふさわしくないもの、イマひとつなものを落としていく作業です。ウケるアイデアとは、必ず複雑ではなくシンプルなものです。そこで、余計なものを削ぎ落とす、だから「ソギキリ」です。最高のアイデアを選び出すフィニッシュ作業です。

この4つの工程を、ヒットメーカーやアイデアマンは、頭の中で瞬く間に行っているのです。普通の人には考えられないスピードで、4つの工程を「処理」しているのです。本人も気づかないスピードで「習慣化」しているのです。

たとえば、昨年大ヒットした曲、「うっせぇわ」。

一度聴いたら忘れられない強烈なこの曲のヒットは、Adoの声の力もありますが、なんと言ってもリフレインされる歌詞のアイデアがあらゆる世代に拡散した要因でしょう。

作詞は、ポカロPのヒットメーカーsyudou。独自のダークな世界観を展開し続ける彼にとって、この曲は特別なものではなかったと思います。それでは、なぜあれほどのヒットに結びついたのでしょうか。

その理由は、彼の頭の中にあります。本人も無意識かもしれませんが、4つのキメワザを頭の中で短時間に実践したのです。

「うっせぇわ」に見る「4つのキメワザ」

「世の中のみなさまが本当にいろんなことに耐えて耐えて、シンプルに言うとうるさいことばっかりなので。みんなが感じているけど言葉にしてないワードって曲にしたらおもしろいかな」と思い、作成したとインタビューで答えています(NHK「あさイチ」2021年10月20日)。

これは、まさに「ナリキリ」です。彼の言う「みなさま」になりきって、一番望むところをしっかりととらえています。

その「みんなが感じているもの」を言語化するにあたり、さまざまな言葉が思い浮かんだはずです。「イヤだ」「ダルい」「面倒」「腹立つ」「黙れ」などなど。