三石原士(以下、三石):「人生100年時代」に向けて何から始めればいいかについてですが、自分が得意なことを武器にアウトプットする機会作りがまず必要かなと思います。僕が開発した「タニモク」は、「他人に目標を立ててもらう」というワークショップで、ワーク中に自分について他人に話す時間があります。たった10分間ですが、みなさん「自分の話をしたのは久しぶり、機会がなかった」とおっしゃいます。
キャリアや働くことについて考える場所やきっかけがすごく少なかったというのが、「タニモク」を作った背景にあります。企画職がアイデアや企画を立てるときに、他人に意見を聞かないということは、まずないと思います。でも、人生や今後の働き方を決めるという大事な選択をするときに、みんな他人に話を聞いたり、アイデアを募ることはしないですよね。
話す、質問されるということを繰り返すと、自分の中で言葉ができていきます。まずは、自分のことを話す機会がなければ、自己理解は進みません。その機会を持つことが第一歩かなと思っています。
横石崇(以下、横石):まさに僕の転身はアウトプットから始まりました。10年前に「Tokyo Work Design Week(TWDW)」という働き方の祭典をスタートさせるわけですが、あの頃は今と違って、東日本大震災の影響で暗い話題も多く、働き方についてオープンに話す空気ではありませんでした。みんなでこれからの働き方をつくりあげていけないかと数人程度の小さな働き方の勉強会でアウトプットを始めたのですが、今では全国3万人に広がり、韓国など海外まで波及しています。
そんな活動の最中で、リンダ・グラットンさんと初めてお会いしました。周囲の人に「働き方の祭典をやりたい」と吹聴していたこともあり、たまたま縁が重なってお話できる機会をもらったのです。
リンダさんにも僕らの活動を喜んでもらい、その場で応援メッセージをもらい、働き方の祭典が本格稼働しました。まさにアウトプットがもたらしてくれた人生を変える体験でした。
横石:他人にとっては苦痛でも、自分にとって苦痛でないものを見つけられた人は強いですよね。僕の場合は、イベントの幹事です。学級委員や学園祭の実行委員なんかは遠慮されがちですが、率先してやっていたタイプです。だから、寝食を忘れてTWDWの場づくりには没頭していました。
三石:没頭する、夢中になるというのは、ヒントがあるなと思います。夢中になることの中には、生きがいや働きがいが隠れていますよね。