取材した人事担当者や研修講師が今年の新人をあまりにも大絶賛するので、「そうは言っても、いろいろと問題点もあるのでは?」と訊ねました。
「いえ、新人としては、取り立てて問題と感じることはありません。前途洋々という言葉しかちょっと思い当たりません」(小売り・採用&教育担当)
「演習をやらせると、80点くらいの合格点に達したらそこで考えるのを止めてしまう新人が目立ちます。100点満点、あるいはそれ以上を目指しとことん突き詰めて考えるという姿勢が欲しいところです。と言っても、先輩社員も経営者も、私自身もちゃんとできているわけではないので…。あくまで希望です」(研修講師H氏)
では、どうして今年の新人はこんなに優秀なのでしょうか。「今年の新人はコミュニケーション能力ゼロだろうという先入観があったので、実際よりもよく見えているだけでは」(研修講師K氏)という懐疑的な意見もありましたが、大学での学習の取り組みや就職対策の効果を指摘する意見がありました。
「学校でしっかり勉強するようになったからでしょう。当社もそうですが、近年、多くの企業が採用で学習歴(学生時代に何を学習したか)をしっかりチェックするようになっています。昔はよくいた『サークルで代表やってました』と得意げに語る学生が減り、学習歴や社会問題に対する問題意識を披露する学生が増えています」(エネルギー・採用&教育担当)
「コロナで就活が様変わりしたこと、1学年上が就活でかなり苦戦したことから、今年の新人の危機感は相当なものでした。採用面接での受け答えなどを見ると、早い時期からしっかり対策を進めてきたことが伺えました。表面的な就職対策だろと見る向きもありますが、コミュニケーション能力や自己分析など、明らかにプラスに働いています」(電機・採用&教育担当)
実際にコロナで就職が厳しくなったかどうかは意見が分かれるところですが、学生がそう認識して危機感を持って対応したことが、結果としての新人のレベルアップにつながったと言えそうです。
ということで、前途洋々の今年の新人。では、仕事が始まって、今後はどうでしょうか。最後に、新人に今後懸念される事柄について訊ねてみました。こちらは、今年の新人が優秀であるがゆえの悩みが多く聞かれました。
「採用担当としては、やはり新人の早期の離職が心配です。4月下旬に新人が職場に配属されますが、当社では団塊ジュニア世代の社員のレベルが低いですし、業務運営や制度が合理化されていない部分もあるので、新人は間違いなく『会社ってバカバカしいところ』『チョロい奴が多いな』と思うはずです。そこで『よし、俺たちの手で会社を変えよう!』と思ってくれればいいのですが、最近の若い世代は帰属意識が低いので、見切りをつけてさっさと転職するのかなと」(機械・採用&教育担当)
「今年の新人は、学生時代に着実に努力し、就活を勝ち抜いてきました。そのため自己肯定感が強く、『努力すれば報われる』と理想主義的に考える傾向があるようです。ただ、仕事を始めると思い通りにならないこと、努力してもどうにもならないことが山ほどあるわけで、その時に挫折しないかが心配です。今年の新人はほぼあらゆる面で優秀ですが、打たれ強さは未知数なので」(輸送機・採用&教育担当)
「今年の新人は協調性や学習理解力が高いので、たぶんすぐに職場に溶け込み、仕事を覚え、力を発揮することでしょう。ただ、当社では若い世代に事業創造や組織改革などで会社を変える突破役となることを期待しています。上司の言うことをハイハイと聞く“いい子ちゃん”では困るわけで、どう成長していくか、期待しつつも心配です」(IT・採用&教育担当)
優秀な今年の新人がどのように成長し、活躍するのか。また、新人を受け入れる職場の上司が新人とともにどう職場を改革していくのか。大いに注目したいと思います。