4月に新入社員が入社して1カ月が過ぎました。今年の新入社員は、大学3、4年をコロナ環境下で過ごし、就活もオンラインが主体でした。他にも、2018年に企業で副業が解禁されるなど働き方改革が急進展し、数年前と比べて学生生活や仕事を巡ってさまざまな変化がありました。
そのためSNS上では、「今年の新人はコミュニケーション能力に問題があるのではないか」「会社に対する帰属意識が低いのではないか」といったネガティブな憶測が聞かれますが、実際のところはどうなのでしょうか。
今回、今年の新入社員に4月以降に対応した大手企業、人事部門の採用・教育担当者17名と外部の新人研修講師12名の計29名に、今年の新入社員についてアンケートとヒアリングで調査しました。この調査を元に今年の新入社員の特徴や課題を考察します。
まず、29名に「3年前の新人と比べて、今年の新人のレベルはどうですか」と訊ねました。結果は以下の通りでした。
優れている 13名
変わらない 14名
劣っている 2名
「劣っている」と回答したのはわずか2名。しかも、うち1名は自社の特殊事情と説明していました。
「当社は昨年の採用活動で致命的なミスを犯してしまい、優秀な学生を採用することができませんでした。当社では大きくレベルダウンしていますが、世間一般ではどうでしょうね。採用活動で接した範囲では、学生のレベルはむしろ上がっている印象です」(金融・採用&教育担当)
また、「変わらない」という回答でも、学生のレベルアップや好ましい傾向を指摘する意見がたくさん聞かれた一方、「劣っている」と指摘する声はほぼ皆無でした。
「大きく変わっているわけではありませんが、最近の学生はしっかり勉強していますし、冷静に自己分析をしています。年々着実にレベルアップしていることは間違いありません」(物流・採用&教育担当)
「能力的には、さほど変わっていません。ただ、会社で働くということについて、自分を見つめ、会社のことを調べ、しっかり就職という人生の重大イベントに向き合っている印象です。研修の受講態度も、『なんじゃこいつは』とこちらが呆れる新人は、激的に減っています」(研修講師M氏)
そして、「優れている」とした回答者は、新人のコミュニケーション能力や参画姿勢などを絶賛していました。
「挨拶のような基本はもちろん、文章力・プレゼンテーション力など全般的に優れています。とくに、オンラインでのコミュニケーションは先輩社員よりもはるかに上ですね。正直、私にこっそり教えてほしいくらいです」(サービス・採用&教育担当)
「今年の新人はコロナ禍で学生時代を孤独に過ごしたので、集団行動に問題があるかなと懸念していましたが、まったくの杞憂でした。新人研修でのグループ単位のプレゼンテーションでは、メンバー同士が円滑にコミュニケーションを取って、熱心に取り組んでいました。アウトプットの出来も過去最高で、ちょっとビックリしました」(素材・採用&教育担当)
「例年、どんな会社にも斜に構えた態度で新人研修を受講している新人が1~2割いるのですが、今年はほとんどいませんでした。楽しそうに笑顔で受講している姿が印象的でした。学生時代に人との交わりが制限されたので、研修で同世代の人と触れ合うことが新鮮なんでしょうかね」(研修講師S氏)
サンプル数が限られるものの、考える力・コミュニケーション能力といった能力、さらに意欲・態度など、今年の新人は例年より優れていることが伺えました。