自己評価と周囲の人からの評価が一致していれば、あまり大きな問題にはなりませんが、一致していない場合、例えば自分はよくできていると思っているのに、周囲はそう思っていないパターンでは、その原因をよく考えなければなりません。
そういうケースを含め、自分に問題があると思われる参加者については、そのコース期間中、私が希望者に対して1対1でEQについてのコーチングを行います。そのコースにはいろいろな国籍の参加者がいますが、相談を希望する人が多い問題の1つに、Empathy(感情移入、共感)があります。
EQでは、Empathy について「相手の心や感情の動きを読み取るスキル。他者に対して世話をしたり、懸念を示したりできるスキル」と解釈します。人間関係を作ったり、その関係性を維持・発展させたりするためにも、とても大切なスキルです。
Empathy の低い人に対して私がしている具体的アドバイスをご紹介します。ご自分で他人の感情を読み取ることが苦手だという方はもちろん、普通にできるという方も試してみてください。
まずは手軽な方法から。外国の恋愛ものの映画のDVDを観ること。一度も観たことのない映画です。全編、字幕と音を消してご覧ください。登場人物が何を言っているのか、推測しながら観てください。何回繰り返して観ても結構です。
Empathy が低い人は、そもそも他人に対する関心が低い人ですから、他人に対する関心を高めるためにこうした訓練が必要なのです。
2つ目は、多少お金がかかりますが、犬や猫などペットを飼うことです。犬や猫の世話をするためには、言葉を話さない動物の気持ちをくむ必要があります。
お子さんがいる方は、お子さんが赤ちゃんだったころを思い出してください。赤ちゃんはただ泣くばかりですが、何を訴えているのか必死で考えませんでしたか。その行為によっても実はEmpathy が鍛えられるのです。
最後は、実際にあるアメリカの会社が経営幹部向けに行っている方法です。それは、Empathy の低いアメリカ人幹部を1カ月間、英語がまったく通じない国・地域に滞在させるというものです。言葉が通じませんから、身ぶり手ぶりで何とか意思の疎通を図ろうとします。
自分が言いたいことを相手にわかってもらえるように伝える。相手が言っていることを全身全霊でつかみ取ろうとする。1カ月の間に、その幹部たちは劇的な変化を遂げて本国に帰ります。
その結果、「他人は自分が言っていることを理解するために努力をすべきである」という自分中心のコミュニケーション・スタイルから、「相手の言いたいことや考えていることを理解しよう」とする相手中心のコミュニケーション・スタイルに変化します。
もし、そこまでできないにしても、試しに一度、相手が「言葉(日本語)が通じない相手」だと想定するくらいの態度で接してみてください。見える景色が変わってくるはずです。
IQが高いだけでは人はついてきませんし、社会的にもビジネス・パーソンとしてもその成功のためには不十分です。心の知能指数を上げる努力を今から始めてください。