他者とよい人間関係を構築し維持できるかどうか。親しみやすく、他者に対して優しく接することができるかどうか。
この3つについて、もしすべて赤信号であるとすれば、そうとう高い確率でその人はビジネス・キャリア上、失敗します。それはつまり、次のような人です。
こんな三拍子そろったひどい人はいないと思いますが、どれか1つでも赤信号、あるいは黄色信号がついている場合でも、要注意です。
私自身も、こうした能力についてのアセスメント(評価・診断)を2009年に受けました。その結果、「社会的責任についての自己評価が低い」という結果が出て、思い当たることではありましたが少なからずショックを受け、改善の努力を続けています。
私は一人っ子だったせいでしょうか、幼少のころから自分1人で物事を進めるのが好きで、大勢の中でチームプレーをするのが苦手でした。苦手ということであって、決して嫌いというわけではありません。
そのアセスメントは、ニューヨークのクロトンビルで開催された、研修講師になるためのテストの一環として受けました。アセスメントでは全部で15のスキルについて評価するのですが、スコアの低かった項目については、チームのメンバーから改善のためのアドバイスをもらいます。
ボランティア活動をしたらどうか、チームメンバーとランチに出かけてはどうか、チームメンバーの誕生会をやったらどうか等々、さまざまな私の"苦手とする"アイデアが出てきました……。まだ満足がいくようなレベルには達していませんが、努力を続けた結果、苦手なジャンルではなくなってきています。
大事なポイントは、先述の決定的な失敗要因は、性格ではなくスキルであるということです。つまり、性格を直すといったような大問題ではなく、スキルを身につければそれでよい話なのです。
ご自分についてはもちろん、周囲の人にこの3つの点で赤信号がついていると思われる人がいたら、ぜひ改善のためのフィードバックをしてあげてください。それは必ず「転ばぬ先の杖」になります。
「いわゆるIQ(知能指数)が高いのは、企業の幹部としては入場券のようなもので、当たり前だ。幹部として自分を差別化したいならEQを磨き上げろ」
幹部はもちろん、将来の幹部候補者たちには、この言葉をいつも繰り返し伝えています。
EQについてはご存じでしょうか。IQが「知能指数」と訳されるのに対して、EQは「心の知能指数」といった表現に訳されています。興味深いことに、EQという考え方が生み出されたそもそものきっかけは、「世の中で成功した人々の理由を、IQの高さだけでは説明できなかった」からだったそうです。
例えば、大学で最優秀の成績を収めた人たちが、社会に出たら結局は、標準的なIQしかない社長の会社で平社員として働いている。ありえますよね。それはなぜなのだろう? その素朴な疑問が、研究者を動かして、EQという考え方が生まれたのです。
GEでも2009年からクロトンビルの新しいコースでEQを教えはじめ、徐々に複数のコースでも教えるようになってきました。上級管理職向けのコースでは、自己評価のアセスメントにとどまらず、上司、同僚、部下など、周囲の人々からもらう360度評価によって、EQについて考えてもらうようにしています。