ロゴマークをそのまま生かしたキャラクターデザインが話題となった2025年日本国際博覧会(以下大阪・関西万博)。実は国際的大規模イベントとしては初めてといっていい取り組みが行われる予定だ。
それはARやVRの技術を活用したバーチャル万博。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が公開している大阪・関西万博の基本計画を見ると、3つの領域に分かれて展開することがわかる。
1つは大阪ベイエリアの万博会場でのAR活用。スマートフォンのカメラとディスプレーを用いて案内や展示の情報量を高めていく。各入場券に割り当てられた固有のIDを活用するとも書かれており、入場券のグレードや購入時に登録した情報を元に、AR表示の内容を切り替えるといった施策も考えられる。例えばお年寄り向けに坂道の少ないコースを案内するといった試みだ。
また、道頓堀ナイトカルチャー創造協議会が開催した観光DXの実証実験「道頓堀XRパーク」では、店舗に設置されたセンサーの情報を元に、店外から店舗の混雑状況や換気状態を確認できる。
2つめは、現地に行くことができなかったとしても大阪・関西万博の催事を体験できる仕組みの提供だ。会場や展示施設に設置したカメラ映像や仮想空間内に置かれたバーチャルパビリオンを、アバターの姿になって世界中のどこからでもアクセスして楽しめるように、APIと呼ばれるシステムを用意するという。
さらに、大阪・関西万博の催事とは別のコンテンツもオンライン空間上で展開するという。この3つめの内容は現時点で一切公開されていないのだが、メタバースに取り組む企業の動きを見ているとVR旅行、VR観光を軸としたコンテンツを提供するのではないかと思える。
前述した道頓堀ナイトカルチャー創造協議会は道頓堀XRパークの一環として、VRメタバースサービスの「VRChat(ブイアールチャット)」、およびVR機器だけではなくスマートフォンの画面から3D CG空間を見ることができるブラウザー拡張サービス「Hubs(ハブ)」を用いて、アバター姿で散策できる「バーチャル道頓堀」も提供していた。
派手な色合いの看板は現実の道頓堀周辺にそっくり。飲食店の店頭は立体的な表現がされているのも特徴的だ。
道頓堀ナイトカルチャー創造協議会の参加団体・企業を見ると、道頓堀商店会、JTB、公益財団法人大阪観光局、NTTドコモ、TryHard Japan、南海電気鉄道、西日本電信電話、パナソニック、富士通、野村不動産コマースとあった。道頓堀商店会が参加していることから、リアルな看板デザインを使うことに関しての権利問題をクリアできたのだろう。
興味深いのは高い場所への移動手段も用意されていたこと。普段は入ることができないさまざまなビルの屋上から道頓堀商店街を眺めることが可能だった。VRであれば物理現象にとらわれない表現が可能だし、新しい観光スポットの開拓にもつながるという実証実験でもあったと思われる。
大阪府と大阪市が提供、KDDI、吉本興業、博報堂からなるKDDI共同企業体がコンテンツを制作し、国産VRメタバースサービスの「cluster(クラスター)」で公開されているのが「バーチャル大阪」だ。大阪・関西万博に先駆けて、注目度が高まってきた大阪の魅力を国内外に発信する目的で作られたコンテンツとなっている。