「え? 今日も在宅? いや、テレワーク自体を否定するつもりはないけど、そんなに目一杯在宅勤務するのもどうか」
メーカー勤務の榊原さん(仮名/47歳/課長)は、能天気に在宅勤務を続ける自部署の若手にモヤモヤが止まりません。
「同じ部署内でも、在宅で仕事できる人とできない人がいますし。こっちはバランスとりながら、出社せざるをえないってのに……」。榊原さんは、管理職の中でもテレワーク積極派のほうで、自分もテレワークしたいんです。でもテレワークに関する職場の不協和音が気になって、渋々出社しているわけです。
出社勤務している人が、在宅勤務している人に対して思っていることは、「通勤しなくていいのでうらやましい」「仕事をサボっていそう」「コミュニケーションが取れなくて仕事しにくい」「テレワークしている人のせいで業務負担が増え不公平に感じる」などと言われます。テレワークを利用している人たちに対して、釈然としない気持ちを抱いている。そんな空気が漂っています。
「人事部門では、給与業務のスタッフは出勤せざるをえないし、経理部門の一部の担当者は、月末は毎日出勤している。それ以外のスタッフはほとんど在宅勤務。出社している社員からは、『なんで私たちだけが出社しないといけないの』という不満の声があがってきていたが、最近では、『テレワークができないなら人事異動させてください』と申告する社員まで出ている」。中堅商社に勤める江口さん(仮名/49歳/部次長)は切実な声でこう語ります。
「うちの部署、在宅勤務は無理だよな!とか勝手に決めつけるの、やめてほしい」
「対面でしかコミュニケーションをとれない時代遅れの人には早々に退散してほしい」
テレワークに消極的なオトナ世代に対する今どきの若手社員の言動は辛辣です。バランスをとって出社するという上司のスタンスには納得がいきません。
「このご時世でいえば、むしろ部下の安全と健康を考えるべき。できるだけテレワークをできるようにするのが管理職のはず。周囲に忖度して出社って、本末転倒じゃないですかね」。こんな言動も飛び出します。
リモートで働くこと自体に不慣れな昭和世代。自分の権利とばかりにテレワークをしたがる若者。その間で、自分もテレワークしたいけど、テレワークに関する職場の不公平感に配慮して、仕方なく出社しているミドルマネジメント。
こんなふうにテレワークの利用については、世代間による温度差がかなり見受けられます。コロナ禍は図らずも、新しい世代間ギャップを生み出してしまいました。そしてそのギャップは、板挟みになりがちな中間層のストレスを増幅させることになりました。
実は、「今どきの若いやつは……」というオトナの嘆きは、今に始まったことではありません。なんと最古の例は約5000年前の古代エジプトにまで遡ると言われます。遺跡の壁画に、象形文字で「最近の若者はけしからん。俺が若い頃は…」と彫られていたらしいのです。なんと、古代エジプトのオトナもイララモヤモヤしていたんですね。