突然で恐縮だが、あなたは今、大学生だとしよう。
想像してほしい。大きなキャンパスの中、朝一の講義を受けるため、あなたは広い講義室に入ったところだ。そこでストップ。ここで1つ質問したい。あなたは今、講義室のどのあたりに座ろうと思っただろうか?
念のため言っておくが、大学の講義というのは、少人数で行う語学や演習系の授業を除き、座る場所は自由だ。
もしあなたがものすごい勉強家で、絵に描いたようなガリ勉なら、きっと前から3列目あたりに座るだろう。
あるいは、あなたが講師のことをこっそりと慕う奥手な大学生なら、講義の間ずっと講師を観察していられるように、最前列の端っこに座るかもしれない。
しかし、ほとんどの学生はそうではない。前日の夜は遅くまでSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を見ていたか、飲食店のアルバイトをしていたため、寝たのは真夜中をとうに過ぎたころ。したがって、今は眠くてしょうがない。
そもそも多くの学生は大学で勉強なんてするわけない。大学は勉強するところではない。キャンパスライフを送るところだ。キャンパスライフとは勉強ではない。よって大学では勉強しない。にもかかわらず、1限から大学に来ているなんて、それだけでほめてほしいくらいだ。これぞ神。
と思ったあなたは、きっと講義室の後方、しかも両翼のどちらかに陣取るのではないだろうか。そこならノートの上にスマートフォンを置いても教壇から見えることはない。
寸暇を惜しんででもスマホを見たい、というわけではないが、友だちが上げたストーリーを見てもいいし、片耳にイヤホンを突っ込んでユーチューブを見てもいい。この辺に座っていれば、いつも遅刻してくる友だちと合流できる。
以上を総合すると、後ろはだいたい埋まっていて、前の座席も両端は誰かが座っており、前方真ん中に空きが多い――という感じを想像するのではないだろうか。
ただ実は、今現在の大学生はそういった座り方をしない。ポイントは学生同士の距離だ。明らかに密集して座るのである。
少し前、あるいは筆者が学生だったころは、隣を1つ空けて座るのが普通だった。隣の椅子の上にリュックを置きたいし、男同士で隣り合うと暑苦しい。1つ飛ばしくらいの距離なら、ちょっかいを出そうと思えばいつでも出せる。2、3人で並ぶこともあったが、両サイドどちらからも抜け出せなくなるような詰め方は、どうも落ち着かない。