インターネットビジネス黎明期からSEOを中心としたサービスを行ってきた株式会社ジオコード。その広報として働いている加藤康二さんが、今回の主役だ。
加藤さんは創業まもないジオコードに8人目の社員として入社し、12年の勤務ののち37歳で転職。
退職時には自身のブログにその時の気持ちを綴っている。始まりはこうだ。
創業者である社長から、当時流行していたmixiの日記に仕事の誘いを書き込まれたことから始まる加藤さんの物語は、
という、壮大な言葉で締めくくられる。ひとつの大きな区切りを決断したことがよく伝わってくる記事だが、結論から述べると、加藤さんは7カ月ほどでジオコードに再入社することになった。
ベンチャー企業の創業期からの社員であること、退職時にブログを書くこと……などに対し、自分が所属する会社とは異なる業界で起きている「他人事」のように感じる人も多いかもしれない。
しかし、彼の話をよく聞いていくと「転職が盛んになった時代に、ひとつの企業で仕事に打ち込んできたビジネスパーソンが抱える悩み」という、普遍的なものが見えてくる。
彼がジオコードを退職した理由は複数あった。具体的には「自分の市場価値への不安と、年齢への焦り」「働き方の自由度(オフィス勤務が前提で、広報にとって重要な外交的な時間を確保しにくかった)」「予定していた上場が延期になったこと」の3つだ。
「転職を考え始めたのは35歳頃のこと。『もう長くこの会社にいるけど、転職市場では自分の評価ってどうなんだろう?』と考えるようになったんです。ジオコードへの入社も社長からの誘いだったこともあり、自分はしっかりとした転職活動をしたことがありませんでした。それゆえ、客観的に自分のスキルを知るタイミングがなかったんです」
転職へのハードルが下がりつつある現代では、同じ企業に長く勤めることに対する焦りを持つ人が多い。これはフリーランス人事として、多くのビジネスパーソンの転職に日々関わっている筆者も感じていることだ。
「正直、焦っていたと思います。年齢を重ねることによって転職の選択肢もみるみる減っていくというか、日に日に自分の市場価値が下がっていく気がしていました。そんな中、広報として”会社の上場に立ち会う”経験ができるのは、自分のキャリアにとって大きなプラスになるはずでした」
しかし、予定していた上場は延期となり、2~3年は見通しが立たない状態となった。
「広報という仕事柄もあり、自分は昔から社外の仕事仲間と交流を持っていました。広報だったり、PRだったり、記者だったり。よくお互いの仕事の話もしていて……。そうやって他の人の話を聞けば聞くほど、『外に出てみたい』『広報スキルの幅を広げたい』という思いが募るようになっていました」