日本人が「GAFA人材に勝てない」メンタル5大問題

技術力や能力以前に、メンタルやカルチャーの問題があるといいます(画像:AnnaStills/PIXTA)
GAFAの強さの秘密を明かし、その危険性を警告した書籍『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は日本だけで15万部のベストセラーになり、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」「ビジネス書大賞2019 読者賞」の2冠を達成、日本にGAFAという言葉を定着させた。
その著者スコット・ギャロウェイ教授の最新作『GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略』が刊行され、発売3日で6万部のベストセラーになっている。本書では、コロナ禍でますます肥大化したGAFAとこの4社に匹敵する権威を持つようになる「+X」の巨大テック企業が再び、世界をどのように創り変えていくかを予言している。
本稿ではグーグル日本法人元社長の辻野晃一郎氏に、「停滞を続ける日本企業」と「覇権を謳歌するGAFA」の差を決定づけた「組織カルチャー・従業員メンタルの違い」を聞いた。
前編:グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」

なぜ日本企業はGAFAのようになれないのでしょうか。私は、よく言われる技術力や人材の能力以前に、組織のカルチャーや従業員のメンタルに大きな違いがあると考えています。

「失敗を許容しない」対「失敗は成長プロセスの一環」

日本企業の問題点として、失敗をとても嫌うということがあります。特に、大企業の役員クラスに多いのが、「失敗は恥、ミスは絶対に許されない」という考えです。 稟議のような仕組みも、できるだけミスがないように確認を重ねるというものです。

『GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略』は、発売3日で6万部のベストセラーになっている(書影をクリックするとアマゾンのページにジャンプします)

発達心理学の分野から出てきた「グロースマインドセット(growth mindset)」という概念があります。失敗とは、成長するプロセスの一環であると大きく捉える考え方ですが、もともとグーグルには、失敗を許容するカルチャーがあります。まっとうな目的意識があったら行動すべきで、仮に結果がうまくいかなかったとしても、チャレンジの証としての失敗については、学びがあってよかった、と許容するのです。

一時低迷していたマイクロソフトは、サティア・ナデラ現CEOが、社員のマインドセットをグロースマインドセットに変えたことで見事に復活し、V字回復を遂げたと分析しています。

一方、先程述べたように、ほとんどの日本企業は、失敗を忌み嫌って恐れます。この心理を「フィックストマインドセット(fixed mindset)」と呼びます。特に管理系の役員が幅をきかせているような企業では、失敗に厳しく、ミスを絶対に許さない。

その結果、現場が萎縮して、自発的なチャレンジをしなくなります。言われたことしかやらないようになり、イノベーションも生まれないのです。これは、なぜ日本からグーグルのような企業が生まれないのかという、根底に関わる問題だと思います。

マイクロソフトのように、企業は頂点に立つトップ一人で変わります。

特に今のような有事が長く続く時代には、つねにハンズオンで、どんなことからでも学ぶ意欲が強く、確固とした世界観や時代感覚を持ち、未来を見通した真に実力のある人がトップに着いて社員を元気にしないと会社の存続は危うくなります。年功序列的、論功行賞的な幹部人事だとか、社内の政治バランスを優先したようなトップ人事をやっていると、そのまま会社の危機に直結します。