自己肯定感が「低い日本人」「高いドイツ人」の違い

なぜ日本人は自己肯定感が低いのか?(写真:Pangaea/PIXTA)

日本は「若者ばかりが自殺する国」

日本は自殺大国です。15~39歳の各世代の死因の第1位は自殺(厚生労働省「2020年版自殺対策白書」より)。また先進国(G7)の中で、15~34歳の年代で死因の1位が自殺なのは、日本だけ。この世代の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は日本が16.3人に対し、フランスは半分以下の7.9人、ドイツは7.5人です。

このように日本では「若い人の自殺」が目立ちます。背景には、長引くコロナ禍でサービス業などの分野で雇用環境が悪化したことなどの影響も考えられそうですが、そうはいっても、人は自己肯定感が高ければそう簡単に死は選ばないはずです。

パッと見ただけでは、相手の「自己肯定感の高さ」を読み取ることはできません。そして「どうすれば自己肯定感が高くなるの」というのも複雑な話になりがちで、なかなか簡単に答えが出ないものです。

一方で、筆者が育ったドイツと日本を比べてみると、「やっぱりドイツ人は自己肯定感が高いよな」と思うこともしばしば。巷では『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』(小学館)という本も人気を集めています。

日本人はどうすれば「自己肯定感の悩み」から解放されるのか? 今回はそれについてじっくりと考えてみましょう。

まず日本だと「聞き上手の人」が評価される傾向にあります。逆に自分の話を延々とする人は「自己中心的」「大人げない」などと批判を集めがちです。

ところがドイツの場合、聞き上手の人はそれほどいません。むしろ、延々と自分の話をする人のほうが多いぐらいです。ドイツでは初対面であっても、身の上話をする人が多いです。

親しい仲であれば、さらに拍車がかかり、自分の家族のことから恋愛のこと、ペットや休暇、果ては政治的立場といったかなり個人的なことまで詳細に話します。自分の話をしているときのドイツ人は決まっていつも嬉しそうな顔をします。

そんな自分のことを何でもよくしゃべるドイツ人に捕まってしまい、正直、「早く終わらないかな」と思うこともあります。とはいえ、注目すべきは彼ら彼女らが“嬉しそうな顔”をしていることです。

そこには「私の話を聞いて!」という承認欲求を感じますし、時には休暇のゴージャスな過ごし方を聞かされて、「これはマウンティングなのでは!?」と感じることもあります。

しかし、ドイツで育った筆者にとって彼ら彼女らはどこか憎めない存在です。延々と自分の話をするドイツ人に慣れているせいか、承認欲求むき出しで嬉しそうに自分のことを話す姿を見ても、むしろ「人間らしくてかわいいな」とさえ思います。

逆に、日本では「自分のことよりも、相手のことを思いやる」ことが良しとされる空気があり、話し上手よりも聞き上手が好まれます。

これが両国の自己肯定感の差につながっているのではないでしょうか。たしかに「謙虚で聞き上手」は日本人の美徳かもしれません。しかし、それを見るほうからすると「人間的にデキた立派なふるまいだな」と思う一方で、「そのうちに過度な謙虚さが自尊心を損ねないだろうか」と、余計なお節介だと思いつつも心配になることがあります。

過去に面白い光景を見ました。日本人とドイツ人が会話している場に居合わせたことがあるのですが、日本人は「おもてなし」の気持ちからか、ドイツ人を前にしてドイツに関心を示す態度を見せるだけでなく、褒めちぎりました。

もちろん自分大好きなドイツ人は、いい気になります。その後、「私はこんなにスゴイんだ!」と自信満々に語り続けるドイツ人と、それを「本当にスゴイですね~!」と相づちを打ちながら聞き続ける日本人という凸凹コンビ(?)がそこにはいました。