これまで、多くの「30歳から伸びる人」たちを取材してわかった意外な真実があります。その多くは、自分の夢を描いて、そこにたどり着くための計画を立て、コツコツと努力してきた人ではなかったということ。「ずっと、この仕事をしたいと思い続けて、夢が叶いました!」なんて人は、ほとんどいないのです。
その人たちが決まって言うのは、「いつの間にか、こうなっていました」、もしくは、「こうなるしかなかった」ということ。そして、「たまたま、~だったおかげで」「偶然、~なことが起きて」と、ひょんなきっかけから、いまの場所にたどり着いているのです。つまり、なりゆきのような“波”に乗ってきた結果、と言っていいかもしれません。
いい波を見逃さずにキャッチする目、波に乗るタイミングが、その後の人生を大きく左右します。「伸びていく人」とは、だれの人生にもやってくる波を受け入れ、味方にしている人だと思うのです。
仕事は、人を喜ばせたり、人の役に立ったりしてナンボのもの。結果的に、収入や、やりがいや評価……と、自分のためになったとしても、まずは人を喜ばせることができなければ、仕事ではないのです。
私たちは「自分」という商材を使って、商売をしているようなものです。「人が喜ぶ、価値あるものを提供する」のが、商売の基本。もちろん、好きな仕事があれば、それもいい。やっていて楽しいから、力も発揮しやすく、結果も出やすいはずです。
でも、世の中や会社、顧客が「いまは、いらない」「もう少し別のものが欲しい」という状況で、「私はコレをしたいの!」「コレしかできないの」という“ひとりよがり”では、商売は成り立ちません。需要や潜在的ニーズがないところで需要を生み出すには、よほど魅力的なブランディングが必要なのです。
「自分が求めていること」よりも、「人が求めていること」を軸に考えたほうが、商売はうまくいくに決まっています。その軸の延長線上で「私にできることはなに?」と探っていくのです。それが自分の得意なことであれば、なおさら価値は高まります。その時点で、できないことであっても、努力次第で、できるようになる可能性もあります。
時代もまわりの状況も、人のニーズも、刻一刻と変わっていきます。そのとき、そのときの状況に応じて、「これなら、できます!」と自分がもっているものを柔軟に差し出していけばいい。どんな人でも、自分なりのやれることがあるはず。あたりまえのことですが、仕事は自分本位でがんばってもうまくいきません。まずは“相手ありき”。人を喜ばせてナンボのもの……その基本さえ忘れなければ、だれでも仕事はうまくいきます。