つまり、「好きなもの」より「得意なもの」。「やりたいこと」より「やれること」。自分が「求める方向」より、自分を「求めてくれる方向」に動いていくほうが、チャンスはある。実際、その方向に動いていった人たちが伸び、結果を出しているのです。
30歳から伸びていくためには、あなたがいる場所で「求められる人」になっていくことが大切ですが、私が確信するのは、だれであっても「できる人」「求められる人」になれるということです。本当にだれであっても。そのためには、まわりの状況、仕事を与えてくれる相手を、よく観察することです。「なにを欲しがっているのか」がわからなければ、仕事のやり方も見えてきません。
たとえば、「会議用の資料をつくって」と頼まれたとします。その資料は、「だれが、なんの目的で使うものなのか」「いつまでに用意すればいいのか」「どれくらいの詳しさを必要としているのか」……それによって、どこにポイントを置けばいいかが変わってきます。
また、仕事を与えた上司が「どんな人なのか」でも、対応はちがってきます。スピードを重視するのか、それとも正確さか、わかりやすさなのか、報告は細かくしたほうがいいのか、わかりにくい部分には説明をつけたほうがいいのか……。つまり、相手の期待するポイントを押さえればいいわけですが、30歳を境に、相手や組織の期待すること、要求することが、大きくなってくるのを感じるのではないでしょうか。
すると、多くの場合、「会社の期待に応えられていないんじゃないか」「自分はこのままでやっていけるんだろうか」と不安を抱えるようになります。期待されることは、チャンスです。逃げたり、負担に感じたりしないで、自ら果敢に飛び込んでしまいましょう。
期待が大きければ、それに応えるスキルを磨き、自分なりの方法を生みだしていけばいいし、もしかしたら別の部分で、それに代わる貢献ができるかもしれない。自分に期待してくれる人、見込んでくれる人には、最高のものを返していこうとすることが、仕事の成果につながります。
30歳から「伸びる人」になるためには、チャンスを味方にすることです。「チャンスなんて、偶然、やってくるものだし……」と、思われるかもしれませんが、自分の気持ち次第で、引き寄せることも可能なのです。
チャンスには、いくつかの特徴があります。まずは、チャンスは、それに相応しい資質がある人に、やってくるということ。たとえば、あなたがあるプロジェクトを任されたとしたら、それだけのことをやる能力があると思われたから。秘かに力をつけて、準備万端にして待っていると、不思議と30歳を転機に、それに相応しいチャンスが「これ、やってみる?」と舞い込んできます。
次の特徴は、チャンスは動いている人のもとに、やってくるということ。「求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、さらば見出さん。門をたたけ、さらば開かれん」とは、有名な聖書の言葉。求めているから、それが与えられる。尋ねたり探したりするから、それが見つかる。門をたたく……つまり行動するから、それは実現する。与えられるのを待っているだけじゃなくて、自分から求めて動いていかなきゃ、だれもチャンスは与えてくれないのです。
もっと欲張ってもいいではありませんか。「やりたいことはやりたい」「欲しいものは欲しい」とまわりの人に願望を伝えて、動いていきましょう。きっと、それに関する情報や人が、次々に引き寄せられてくるはずです。
そして、3番目の特徴。チャンスは、あっという間に過ぎ去ってしまうということ。たとえば「この仕事、やってみる?」と言われたときに、「やる!」とすぐに飛び込んでいかなければ、待っていてはくれません。「力をつけていく」「求めて動く」日常を送りつつ、「これだ!と思ったら、即、飛び込む」。そんな人にチャンスの神様はほほえむのではないでしょうか。