「あの人は絵が上手い」「あの人は下手だ」、そんなふうに言ったり、耳にしたりすることがあるでしょう。その差は、いったいどこにあるのでしょうか?
私はこれまで、数万人の大人や子どもに向けて「絵の描き方」を教えてきました。身近な題材、たとえば「ドーナツ」や「家」を描いてみようと提案したとき、「絵が上手でない人」は、決まって次のような描き方をします。
それは、小さな円の周りに大きな円を描いた「ドーナツ」や、正方形の上に三角形の屋根をのせた「家」の絵です。
なぜそれらが「上手な絵」に見えないのかというと、そこには「あるもの」が欠けているからです。
「上手な絵」を、ここでは「まるで本物のようにリアルな絵」と定義しましょう。では、円が2つ重なった「ドーナツ」や、三角形と四角形で構成された「家」が、「上手な絵」に見えない理由は、どこにあるのでしょうか。具体例を挙げて解説していきます。
「絵が下手な人」と「上手い人」の差、1つめは「立体感」を表現できるかどうかです。「スマートフォン」を描いてみると、よくわかります。
みなさんは、スマートフォンをお持ちですね? 今まさに手にしている人も多いはずです。
便利ですが、まわりが見えなくなるほど人を夢中にさせる「スマートフォン」。こんな当たり前のように使っている身近なものこそ、「おもしろい絵の題材」になります。
スマートフォンの形は、いうまでもなく長方形です。しかし、ただ長方形を描いても、リアルな絵に見せることができません。なぜなら、そこには「立体感」がないからです。
では、どのように描くと、「立体的に」見えるのでしょうか。
私の「30分方式」の描き方では、対象を身近な「基本図形」に分解して「設計図」を作ることから始めます。
まず、左側に傾けた斜めの「長方形」を描きましょう。その後、最も高い位置にある右上の角を頂点とした「三角形」を取り除きます。