また、学校での暴力といじめは別のものとして区別される。生徒同士の喧嘩であったりする場合もあるからね。だから、いじめの場合には、ある一定期間の継続と、相手を傷つけようとする意志があると考えられている。近年は、ネット上のいじめである、サイバーハラスメントが、学校でのいじめの中で大きな位置を占めるようになってきている。
くみ:それと気になっていたのはフランスでのいじめの内容。私が20年ほど前に東京都内で小学校から高校まで通っていたころは、無視や仲間はずれ、陰口などが主ないじめの内容というイメージだった。
例えば、小学生のときに覚えているのは、服装が自由だった学校で、2日間同じ服を着てきていたおとなしい子が「汚い」「貧乏」などと陰口をたたかれていたこと。私はそこまで他人の服装を気にしていなかったからそんなことに気付いて指摘をすることに驚いたから今でも覚えている。それに他のことに気を取られていたら私自身も連日同じ服で登校しかねないし、そんなことを言われるなんて怖いなと思った。
中高のときは外国から帰国した転入生が、自己アピールの仕方や冗談の言い方、笑うツボ、制服のアレンジの仕方などが他のクラスメートと違うなどといったことで距離を置かれたり無視されたり、持ち物を隠されたりというようなこともあった。
もちろん当時ももっと暴力的だったり、あからさまに攻撃するようないじめもあったと聞いているけれど、最近は被害者の中学生が自殺した件など、スマホの普及で複雑化もしてるし親や教師などの目から届かないところで行われがちなのも問題だと報道されている。
今回フランスの法律が可決される1つの理由となった、「いじめは犯罪である」というのは日本でも当てはまると感じる。ただ、フランスでは年末の車燃やしもそうだけど、犯罪が総じて日本より暴力的なイメージがあるのだけど、いじめについてもそう? エマニュエルが子どものころや学生のころはどんないじめがあった? 今はやはりフランスでもスマホの普及でいじめの内容も変わってきているのかな。
エマニュエル:フランスにも昔からいじめはあったけれど、確かにネットやスマホの影響でさらに状況は悪化しているように思えるね。ネット上だと親や教師に認知されにくいというのもある。それにネット上のいじめには、いじめる側のグループには人数も時間も場所も制限がなくなるわけだ。これは僕が子どものころにはありえなかった話だ。とはいえ、僕が学生だったころにも、ハラスメントのようなものを目撃したことはあるよ。小学生時代に僕が体験したのは学校内で行われたものではなく、電話を使ったものだった。当時は携帯なんてなかったから、家の固定電話だね。同じ学校の誰かが、僕やほかの何人かの生徒に昼夜を問わず何度も電話をかけてきた。そして受話器を取っても相手は何も答えない。
これが何日も続いて、しばらくしたある日、電話の向こうの相手が答えた。そして、僕が当時好きだった女の子のふりをして、「言いたいことがあるの、私あなたが嫌いなの」と言った。これで、声や話し方から、相手が同じクラスの女子の1人だと判明したんだ。理由はよくわからないけれど、僕に嫌がらせをしたかったんだと思う。
中学の時は、もっと暴力的で身体的なハラスメントだった。学校が終わって校舎から出るときにしょっちゅうガラの悪い上級生が12,13歳の下級生を相手に脅してお金を巻き上げたりしていた。だから毎回帰宅時は気を付けないといけなかった。
そして僕の通っていた学校には、5月4日の聖バルバラ日に上級生が授業終わりに学校から出てくる下級生に向かって小麦粉やら玉子やいろんなものを力いっぱいぶつけてふざけあうということが、悪しき伝統行事のようにして毎年繰り返されていた。僕は物を投げつけられるのが嫌だったので、その日はできるだけ人を避けてバスに乗り込むようにしていた。