フランスが「学校のいじめ」厳罰化に動いた事情

フランス版の新歓コンパがつらかった

大学やグランゼコールの時代には、おもに新入生を歓迎するために行われる「歓迎ウィークエンド」に関連するものが多かったかな。聞こえはいいけど、新入生にとっては試練みたいなものだったよ。アルコールを強要したり、よくわからないゲームや性的なゲームなどに無理やり参加させたり、いろんな方法で新入生に屈辱を与えることが目的みたいなものだった。

当時の僕はもうハラスメントは何度も見てきたので、このことにいちいち驚いたりショックを受けるほど繊細でもなかったので、このような行事にはすぐに参加しないようになった。今でも時々、新歓行事での死亡事故やレイプなどの事件がおきているので、まだまだ解決されていないといえる。

くみ:それもひどいね……。日本でいえば急性アルコール中毒で死亡する新入生の痛ましいニュースで悪名高い新歓コンパに当たるかな……。ただし私が大学に入って経験した新歓コンパは、上級生たちがすごく敏感になっていて、「急性アルコール中毒の問題があるから絶対に無理して飲まないように!」と頻繁に声がけしてくれてとても安心した。レイプはニュースにならないところで隠れて行われることはあるかもしれないけれど、定期的にニュースになるほどの頻度で起きるなんて、ちょっと考えられない……。

話を戻して、今回のフランスの厳罰は、刑事責任を問われない13歳未満には適用されないけど、低年齢でのいじめも日本同様にあるとすれば、そこへの対策はどうなっているのだろう? 今のフランスの学校では法律以外に何か対策を行っている?

エマニュエル:中学以前ではハラスメントの件数が少ないというのが理由の1つでもあるかな。まだ携帯を所持していないこともあってSNSの利用も多くなく、学校内でもかなり監視されているため中学以降のようにハラスメントの機会が少ない。

くみ:つまり、比較的低年齢であれば学校である程度コントロールできるということだよね。もう少し詳しく知りたいな。

コロナによる遠隔教育でタブレットなどを使用する必要も出てきているはずだけど、小学校ではスマホを含む通信機器類は小学校では基本的に全面的に禁止なの? それと、例えば口頭でのからかいや悪口、休み時間の仲間外れなど、小学校の敷地内でも教師の目の届かないところで簡単に起こりえると考えられることについても、つねに教師が見張っていたりするということ?

「加害者の未来を尊重すべき」フランスの考えは?

エマニュエル:そうだね、小学校で携帯やタブレット、ゲーム機は基本的に禁止されている。休み時間はみんな校庭にでて教師や監視役の人が必ずついている。もちろん全部監視することはできないけれど、この年齢の子どもは何かされたら大人に言いつけに行くことに中学生よりも躊躇しないので、表に出やすいというのもある。とはいえ、まったくないわけではないだろうとは思う。

くみ:あと日本では最近の事件でも「加害者の未来を尊重すべき」として未成年である加害者の未来を尊重する意見があって、中にはそれを理由に事実関係の調査や各教育機関による適切な処罰も行われないことがあるとの報道もあるけれど、フランスではこのような意見は今回強く出てきた?

エマニュエル:そういった意見はあまりフランスでは聞いたことがないかな。でも、さっき話したミラ事件なんかは、禁固数カ月だけという軽い刑罰のみだったことを考えると、加害者の未来への考慮も考えられていたのかもしれないね。

だが、今回のほうでは最大10年の禁固刑となっており、以前と比べるとはるかに刑は重くなった。中高生にとって10年を失うということは大きなことであり、加害者の未来よりも被害者への配慮に重きが置かれたと考えられる。そしてこれによってスクールハラスメントへの抑止に少しでもつながると期待してもいいだろう。

くみ:法整備でいじめ問題が減少することを願うばかり。そして被害者へのケアもさらに充実していくといいよね。