「いつも時間がない人」の共通点は、とてもシンプルです。「忙しい、忙しい」と言っていても、よく精査してみると、大したことをやっていないということはよくあります。
例えば、探しものをする人は少なくないと思います。大塚商会の調査によると、ビジネスパーソンは年間約150時間、労働時間の実に1割近くを探しものに費やしているそうです。
「あの資料はどこにしまったっけ」とか「連絡先はどこだっけ」とか、「ふせんが見つからない」とか「あの言葉はなんだっけ。検索してみよう」という具合です。さらには「今日、何、着ていこう」と悩むこともあると思います。
ネット検索していて、関係ない別のことにどんどん深入りしていくのも、広義の探しものに含まれます。
資料やデータをちゃんと整理しておく。ムダなネットサーフィンはしない。着ていく服は前日に決めておく。それだけでよけいな探しものに時間をとられなくてすみます。
また段取りが悪いのも、やるべきことを増やす一因になります。よく「二度手間」といいますが、1回ですむことを二度も三度もやっていれば、時間も足りなくなるでしょう。気づけば「いつも時間がない人」になってしまいます。
よく、忙しくて時間がない人は、仕事ができる人と勘違いされがちです。しかし、そんなことはまったくありません。やるべきことが増えれば、作業効率は下がるからです。
ピーター・ドラッカーは「成果をあげていない人のほうがよく働いている」と言っています。理由は、成果のあがらない人ほど、仕事に求められる時間を過小評価しがちだからです。また、彼らは複数の仕事を同時進行しようとするからです。
性質の異なる作業を同時にいくつもこなそうとすると効率が落ちます。しかし、ビジネスパーソンの典型的な1日を考えると、朝から上司に報告したり指示を仰いだり、取引先のメールに対応し、資料をつくり、その間に会議や打ち合わせに参加し、クレーム対応をし、部下の相談にまで乗ったりしています。
こういう人は、一見できるビジネスパーソンに見えますが、一つひとつの仕事の効率は決してよくありません。ミシガン州立大学の実験でも、複数の仕事を同時にこなそうとする人は、一つの仕事に専念する人よりも生産性が25%も低かったそうです。
また、内閣府の調査「ワーク・ライフ・バランス社会の実現と生産性の関係に関する研究」によれば、1人当たりの労働時間が10%減少すると、1時間当たりの労働生産性は25%高まる、と報告されています。
つまり作業量が減れば、生産性はあがる。
作業量が増えれば、生産性は下がるのです。
考えてみれば、当たり前ですよね。やることが多くなって、忙しくなれば、それだけ集中力が落ちます。脳の働きも下がってきて、後半になればなるほどパフォーマンスが落ちてきます。
さらに自分のキャパシティを超えてくると、ストレスがたまって、体調がくずれる。どんどん生産性が低くなるので、成果も出なくなるというわけです。あれもこれもやろうと思って、仕事量を増やしてしまうと、一つひとつの成果も低くなっていくだけです。