私は、東京大学を卒業し、大学院で医学博士号を取得した後、フランス国立研究所にポスドク(博士課程修了の研究者)として勤務していました。また、どんな面白い人が集うサークルなのかという興味本位で、MENSA(世界の全人口で上位2%の知能指数に入る人のみが入会を許される団体)の会員になったりもしました。
そのような中で、IQの高い人たちや、世界で評価され、活躍しているビジネスパーソンなど、世界中のさまざまな「頭のいい人」の姿を見ることができました。
ここでは、これまでに出会ってきた優秀な方々の中から、つねに高いパフォーマンスを発揮し、掲げた目標をきっちり達成していたある女性のお話をしたいと思います。
ドイツ人のEさんは、神経内科の優秀な医師。研究に対する意欲が高く、臨床もこなしながら、研究者としてのキャリアを積み上げていっている女性です。
彼女は目標を達成するまでの制限時間というのを自分で定めていました。すると自動的に「やるべきこと」が明確になります。あとはただその「やるべきこと」をこなしていくだけです。
ただし、ここからが肝心なのですが、彼女がすごいのは、「やるべきこと」を考えると同時に、「やらないこと」を明確にしていたところにありました。Eさんが研究者としても医師としても一歩抜きん出て、皆に評価され、優れた成果をあげることができた秘訣は、この「やらないこと」を上手に見つけていくところにあったのです。
研究者の世界の話ではなく、もっと多くの人に身近な題材を例に説明します。
例えば、「TOEICで今年は800点以上を取ろう」という目標を決めたとします。「やるべきこと」は簡単ですよね。必要な教材を集めて勉強することです。ただ、期限を今年中とすると、何でもかんでもやるというわけにはいきません。そこで、「やらないこと」を、次に探さないといけないわけです。よくよく考えると当たり前のことなのですが、「やらないこと」まで最初に決める人は、意外と少ないでしょう。
では、どんなことをやめたらいいのでしょうか。
ありがちなのが、新しい参考書や問題集を買い続けること。買っただけで英語ができるようになった気分になってしまうのでしょうか。でも、教材を手元に置いておくだけでは点数は上がりません。つまり、こういう人は「新しい本を買う」のを「やらないこと」が必要です。
また、勉強するときにモチベーションが上がるからといって、勉強仲間を増やすのに精を出す人もいるようです。でも、800点以上を取るという目標からいえば、無駄が多い行動ともいえます。目標はあくまで、スコアアップであり、勉強仲間を増やすことではないからです。
仲間が増えたところで、勉強をしないと、当たり前ですが点数は上がりません。驚くべきことに、満点を取った人など、ハイスコアの人と友だちになると、それだけで自分がハイスコアを取ったように錯覚してしまう人がいるようです。ウソのようですが、これはTOEICに限らず、大学受験などでもよくある話なのです。