仕事では自分が担当している枝葉の部分だけではなく、その先にある「目的」を見据えて動くことが大事。しかし、これは前提条件。「主人公思考」を持った一流のプレイヤーになるためには、その一歩先を目指す必要があります。
仕事の目的はわかった。こう動けば目的達成に貢献できるだろう。これは「理解」です。ここまでは皆さん、それほど苦労せずにできるでしょう。一流のプレイヤーというのはその一歩先を行き、「自分だったらどうしたいか」と考える。目的を理解したうえで、自分の選択を持って行動に移します。
では、このレベルに上がるには何が必要か。ポイントは「共感」にあると考えています。
「主人公思考」を持っている人は、「理解」で終わることなく、「共感」のフェーズまで行く。「共感」とは何かというと、自分自身が「好き!」「面白い!」と感じることです。
例えば、同じゲームを作るにしても、「ユーザーはこういうのが面白いと感じるんだよね」という「理解」を前提にしている人と、「こういうのがあったら面白いよね!自分だったら徹夜でやっちゃうな」と「共感」を前提に考えている人とでは、生まれるアイデアやアウトプットがかなり変わってきます。後者の人が担当したほうが面白いゲームになりそうなことは、容易に想像がつきますよね。
僕自身も、自分が面白いと感じているものに対しては、「じゃあ次、こういうのやったら楽しいよね」とすぐに具体的なアイデアが降ってくる感覚があります。しかも、感情的にピンと浮かぶ。
また、何か問題が起こったときも、前向きに解決策を検討できるだけでなく、「こうすればもっと面白くなるんじゃない?」とさらに良いアイデアが湧いたりする。こうなると仕事がどんどん進みます。
本当の意味で「自分事化」するには、やはりこの「共感」が大事なポイントになる気がしています。
しかし、共感の域に達するのは難しい。本当の意味でここまで行けるのは1割くらいでしょうか。自分が元々好きなジャンルの仕事をするときはいいのですが、いつも好きなものばかり担当できるわけではないからです。
特に会社員の場合は、まったく興味がない仕事や不得意ジャンルを突然任される、ということが珍しくない。今では総合プロデューサーを務めている『アイドルマスター』にしても、プロジェクトに参加した当時の僕にとっては未知の世界でした。
そんなときはどうすればいいか。まずは、先ほどお伝えしたように、その仕事について「理解」することです。それができたら次に、どこか1つでいいから自分が「好き」「面白い」と感じるポイントを見つける。
すべてに共感するのは難しいとしても、たった1カ所でいい、と言われたら見つかる気がしませんか。例えば、「女性アイドル」というジャンルには興味がないけれど、あのアイドルが卒業ライブで言っていた言葉には感動したとか、アイドルとしての彼女はよく知らないけれど、雑誌で紹介していた私服がすごくかわいかったとか。そういう経験なら比較的、誰にでもあるのではないかと思います。