コロナ禍により私たちの生活環境や消費状況は一変し、多くの企業のビジネスモデルが変革を迫られています。これまで売り切りのプロダクト販売一辺倒で事業利益を確定してきた企業はそれが通用しなくなり、「収益の多様化」を要に今の低利益からの脱却の必要性を感じています。
書店も例外ではありません。
丸善丸の内本店は、「日本で一番ビジネス書を売る書店」として知られています。しかし、ここにも余波は襲いかかりました。
同店の店長の篠田晃典さんは、コロナ禍以後の同書店についてこう話します。
「私たちの店舗は、東京駅の目の前というビジネスの一等地に店舗を構えていることが最大の強みでしたが、コロナ禍で180度変わりました。周辺企業の多くがリモートワークに切り替わり、東京駅なのに人がまばらで来店客は半減。まさに有事を目の当たりにしたのです」
売り上げも大幅にダウンした一方で、実は、外出を控える生活になり、紙の本そのものが見直されている側面もあります。まだまだ売れる素地はあると力を込める篠田さんは、「本を売る」というプロダクト販売とは別に、「グッズを売る」というキャラクタービジネスに着手しようと思い立ちます。
「YouTubeしかり、SNSしかり。今の売れる本の傾向を見ていても、コアなファン作りを地道に行っている著者が、知名度の高い著者よりもはるかに集客して結果を出すことを実感しています。
これからはマスに対してではなく、いかにニッチに地道にファンづくりを行うかが問われていると思います。その一環として、キャラクタービジネスは付加価値づくりの意味でも、大きなフロンティアになると思ったのです」
篠田さんが目をつけたのは、数あるジャンルの中でも絵本でした。日本のマンガやアニメの市場は大きいですが、絵本はまだまだ低い。低いけれど、ポテンシャルは高い。
それは、ロングセラーになるほど強力なコンテンツなのに、キャラクタービジネスが戦略的に展開されていないからです。大手出版社によるマンガやアニメのように、ライセンスを使ったビッグビジネスが展開されていないことが多いのです。ゆくゆくはグローバル市場進出を念頭に置いても、絵本は最適でした。