日本の上場企業はソニーグループやホンダなど1945~54年設立の会社が119社と最多の一方、米国の上場企業はアマゾンやフェイスブック(新社名メタ)など95~2004年に設立された会社が124社と最多──。
今年10月、岸田文雄・新政権の肝煎りで立ち上がった内閣官房「新しい資本主義実現会議」の提言には、こうした表現が並んでいる。
日米の比較において、日本は企業年齢の老いが目立つ。ユニコーン(企業価値10億ドル超の未公開企業)の数は、2021年3月1日時点でアメリカ274社、中国123社、欧州67社に対し、日本はプリファードネットワークス(深層学習)、スマートニュース(ニュースアプリ)、リキッド(仮想通貨)、プレイコー(モバイルゲーム開発)のわずか4社にとどまるとの指摘もある。
GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)と呼ばれるアメリカのIT業界の巨人5社の合計時価総額に、東証1部上場企業約2200社が束になってもかなわないという構図も生まれている。
ただし、未来を牽引する成長企業が日本に潜んでいないわけではない。
週刊東洋経済11月29日発売号「発掘!未来の成長企業」を特集。東洋経済が独自に選定した成長期待企業の中から過去3期の平均売上高成長率で集計した「新興成長企業ランキング」や、会社の代表者が現役職に就任してからの株式時価総額倍率を集計した「トップの通信簿ランキング」などを掲載した。
ここではその一部を紹介する。
新興成長企業ランキングで4位に入ったプレミアアンチエイジングは、基礎化粧品をサブスクリプション(定期購入)型で販売し、将来は予防医療の分野への進出もうかがう。
スポットコンサルティングを手がける5位のビザスクは、今年11月に売上高が自社の倍ある米国の同業企業コールマン・リサーチ・グループを買収し話題を呼んだ。
トップの通信簿ランキングで首位となったレーザーテックは、09年7月に現社長が就任してから時価総額は約267倍に上昇。日本の上場企業全体の時価総額でもトップ50に入りそうな勢いだ。半導体の露光工程に使うマスク欠陥検査装置というニッチな分野で強みを発揮している。
4位のトリケミカル研究所も、同じくニッチな分野に強みを持つ。半導体の超微細加工に必要な特殊化学材料を主力とし、5G(第5世代移動通信システム)で需要が盛り上がる光ファイバー向けなどでも業績を伸ばす。
上場後のM&A(合併・買収)を積極化する新興企業も目立ち始めた。前述のビザスクに加え、ソフトウェアの品質保証を手がけるSHIFTは、2カ月に1社というペースでM&Aを実行している。
顧客企業が開発したソフトウェアやサービスをテストするだけでなく、M&Aによって企画や設計、開発、管理、さらに完成したサービスのマーケティングや営業まで担うことを目指す。SHIFTは新興成長企業ランキングで26位、トップの通信簿ランキングでも32位に入っている。
上場後の企業の成長を後押しするために、政府も動き出した。
「日本の上場の仕組みでは、スタートアップではなく証券会社の顧客が儲ける構造になっており、スタートアップに十分な資金が回っていない」。岸田内閣の提言には、IPO(新規株式公開)のあり方をめぐる、こうした具体的な内容も盛り込まれた。