同僚に「あの取引先にはもっと積極的な提案が必要なんじゃないか」と助言したら、「上から目線で偉そう」と思われてしまった……。このように、よかれと思ってアドバイスしたはずが、逆に嫌われてしまった経験はありませんか。
原因は、相手との「距離感」をうまく保てないことにあります。適度な距離感を保てない人の特徴として挙げられるのは、相手に「感情移入」をしてしまいがちなことです。感情移入しすぎると、相手の問題が自分の問題のように思えてきます。知らず知らずのうちに、「もっとこうしたらいいのに」と相手をコントロールしてしまいたくなってしまうのです。
自己肯定感の高い人は、相手と距離を保とうとします。相手の感情に「移入」するのではなく、「思いをはせる」ようにします。「思いをはせる」とは、相手の状況や感情を想像して「眺める」こと。相手がどんな感情を抱いているか、どんな状況なのかをただひたすら眺めます。
すると、眺めているうちに、「私には何が手伝えるのか」と自分がすべきことが見えてきます。映画を観るように、自分という心のスクリーンに相手のことを映し出してみましょう。どんなに親しい間柄にも距離は必要です。まずは、「眺める」ことを心がけてください。
相手をありのままに「眺めよう」としたいのに、どうしても相手が何を考えているのか気になってしまうことがあります。それは、人の心を「深読み」しているから。
「部長は慎重派だから、私の意見に反対するに決まってる」「課長は陽気で仲間が多いから、寡黙な私のことを嫌っているに違いない」などと、勝手に思い込んで、勝手に考えすぎてしまうのです。
相手を「こういう人だ」と思い込んでしまっているときには、自分を内側から観察する目が足りていません。ネガティブな感情が沸き上がったら、自分自身の心も一緒に観察してみましょう。思い込みをしている自分に気が付くはずです。
思い込みを防ぐために、「なぜ人は思い込みをしてしまうのか」を知っておきましょう。
思い込みとは、3つの「ち」から生まれます。
1「血」 親や周囲の大人たちからの教え
2「地」 育った国や土地の慣習や価値観
3「知」 世の中の主流とされる思想や社会的な事件を通して(例・コロナ禍でのさまざまな情報)
3つの「ち」による思い込みは、自分で作り上げた価値観とは違います。ですから、自分の本当の思考や感情がゆがみ、違和感が生じてくるのです。思い込みは一つずつ手放していきましょう。
相手を「眺める」ことは、無用な敵を作らないことにもつながります。ビジネスマンは特に、社内外に敵を作らないよう心がけたいもの。「アイツとは一緒に仕事したくない」と思われたら、噂が広がり、そのうち周囲の協力まで得られなくなるかもしれません。
自己主張が苦手で周囲から「何を考えているのかわからない」と思われがちな人、他人の欠点ばかり気になって指摘する人、過去の実績の自慢ばかりしている人などは、非常に敵を作りやすいタイプです。
では、味方の多い人とはどんな人でしょうか。それは、「一緒にいてラク」と思える人です。
「一緒にいてラクな人」は、物事をポジティブに受け止めるという特徴があります。何らかのトラブルが起こったとき、「あいつのせいでしくじった」と愚痴を言のではなく、「解決のためには何をすればいいか」「このトラブルから得られるものは何か」を考えられる人です。