「FIRE達成だけを考える人」の甘すぎる人生設計

FIREがうまくいかないのはどのような場合でしょうか(写真:jessie/PIXTA)

中国恒大集団の債務不履行(デフォルト)への懸念をきっかけに、株式市場の先行きが不透明になっています。一時的な値下がりなのか、金融危機に発展するのか注目が集まっています。

若い世代を中心に関心が高まるFIRE(経済的自立と早期リタイア)関連の書籍では、過去の金融危機は5年で回復してきたとあります。実際には5年待てない人も多いでしょうし、人生を俯瞰してみればさまざまな要因でFIREを断念せざるをえない場合もあるでしょう。

金融危機による株式市場の暴落リスク

FIREを目指す人の多くはアメリカの株式市場、とくに株式指数に連動したインデックス投資信託やETF(上場投資信託)へのパッシブ運用(市場連動)が基本であるとします。過去のITバブル崩壊、リーマンショックなどの大きな相場下落は5年もすれば価格が回復してきたようです。長期低迷していた日本の株式市場とはだいぶ違います。

株式相場の下落は定期的に発生します。価格下落のタイミングが投資初期であれば、価格下落時にも積極的に資金を積み立てる選択はあります。しかし、いよいよFIREが現実味を帯びてきたタイミングで相場が下落したらどうなるでしょう。

相場下落はイコール投資期間の延長を意味し、FIREまでの期間が長くなります。単純に5年待つということであれば、リタイアは5年以上先延ばしになります。

とはいえ、安全性の高い投資先である国債などに資金を移せば利回りが激減し、FIREの基本的な考え方である「4%ルール」を維持することができません。

資産規模が大きくなったらどうすべきか、iDeCoやつみたてNISAならば残期間が短くなる場合にどうするか、という問いに対する自分なりの回答を考えておくべきでしょう。

中国恒大集団の問題より以前から注目されていたのは、アメリカのテーパリング(金融市場緩和の終了)や政策金利の上昇です。

日本と同様に各国で金融緩和を行うことで、余剰資金が株式市場など投資用に流れる現象は、各国の政府や中央銀行のさじ加減次第となります。世界中の投資資金を引き上げる流れになれば、右肩上がりの株式相場が終わりを迎える可能性があります。

前述の金融危機に比べて、政策動向は情報が広く出回っています。投資の残期間を考慮して、投資を続けるか、回復するのを待つか、売却し利益や損失を確定するかの対応が必要でしょう。

自分の年齢をパーセントに換算した割合の安全資産を持つという意見もあります。例えば30歳なら投資資金の30%を国債、70%を株式等に投資。70代なら投資資金の70%を国債、30%を株式等に投資、というような方法です。

実際には、一人ひとりの投資リスクのとり方によります。リスク資産をどの程度の割合で保有し続けるのか、自分なりの基準を設けておきましょう。

結婚でFIREが遠ざかる可能性も

結婚に伴う家計の一元化で当初の積立額が継続できなくなり、FIRE目標が遠ざかる可能性があります。

本格的にFIREを目指そうとする人たちは、手取りの7~8割を積み立て投資に充当するツワモノもいるようです。貯蓄率8割ということは、手取りの2割で生活することになります。

給料の支給額面30万円で手取り(社会保険料、所得税、住民税控除後)24万円とした場合、19.2万円を貯蓄に回し、4.8万円で生活することになります。

独身かつ実家住まいで家賃と水道光熱費の負担がなければ、食費、携帯電話料金、被服費などで5万円以内に抑えることは可能です。

しかし、結婚して家を出れば家賃を支払う必要があります。夫婦で暮らすには1DK、1LDK位の広さは必要だとすると、今まで生活費に充当していた4.8万円相当の住居費が必要です。