こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャ®」の大野萌子です。
コミュニケーションについての悩みの中には、「言いにくいこと」を抱え込み、困ってしまった、というケースがよくあります。そうした「言いにくいこと」の代表的な例が「断ること」です。
取引先からの依頼、友人からのお誘い、急な頼み事……。断りたくても、「NO」と言えば相手に嫌われてしまうのではないかと思い、結局引き受けてしまった、というのはよくある話です。
人と協調するように、と教えられて育つ日本人は、どうしても断ることを躊躇する傾向があります。しかし、断ることこそ大切なコミュニケーション、今回はそのコツを拙著『困ったときの言いかたルール:「言葉選び」「タイミング」「心くばり」』の中から、お伝えしたいと思います。
仕事はもちろんのこと、プライベートでもすべての依頼や誘いにYESと言うのは難しいものです。だからこそ、まずは「NO」と言うことへのためらいをなくしてください。ビジネスではとくに、きちんとこちらの意思を伝えなければ誤解やトラブルを生んでしまいます。
例を挙げてみます。
Aさんに、取引先のBさんから仕事の依頼が来ました。Bさんは昔からの知り合いです。受ける気はなかったのですが、その場ですぐにはっきりと断るのはちょっとためらわれ、Aさんは次のような返事をしました。
「検討させていただきます」
このような言い方はビジネスではよく使います。
当然、Bさんは付き合いのあるAさんに期待を寄せます。「検討する」と言われたので返事を待ちました。
その間、せかしてもいけないと思い、連絡も取らずにギリギリまで待ちました。それでも返事がなかったので連絡を取ったところ、NOの返事でした。
結局、期待したAさんからはOKをもらえず、Bさんはほかに発注するチャンスも逃します。これをきっかけに、両者の関係は悪くなってしまいました。
Aさんがその場を取り繕うために半ば社交辞令として伝えた一言が、大きな溝を生んでしまったのです。
確かにギリギリまで待ったBさんにも責任がありますが、その気がないのならAさんは、はっきりと断ったほうがよかったのです。それをしなかったために、相手に期待を持たせることになってしまいました。
このトラブルの原因は、断ることで相手に不快な思いをさせたり、怒らせてしまうかもしれないという思い込みです。
しかし、よく考えてみてください。曖昧にすることでその場はうまく収まったかもしれませんが、結果的には相手に損をさせ、関係性まで悪くしてしまいました。つまり、関係性を考えて、NOと言わなかったのは、「相手のため」ではなく「自分のため」だったのです。
このようなケースを生まないためにも、NOははっきりと、シンプルに伝えることが基本です。いきなりNOと言うのは失礼になるかもしれませんから、最初に日頃の感謝を述べてからNOの意思表示をするといいでしょう。そのときには誤解を生まないように、表情も言葉も曖昧にしないことが大切です。相手の目を見て、しっかりと言いましょう。
また、断るだけでなく、代案がある場合は、それを伝えると完全な拒否にならずに済みます。
例えば、午後の誘いを断る際に、「午前なら行けます」。あるいは日時の都合が悪い場合なら「○日なら空いていますが、いかがでしょうか」という具合です。
ただ、どうしても行きたくない用事の場合は、お茶を濁してはダメです。相手に期待を持たせないように、代案などは出さずに「夜は家に早く帰らなければいけない用事があるので、行けません」など、相手にわかるようにはっきりと断りましょう。