断りにくい例としてよくあるのが、「仕事のサポートを頼まれた」というケースです。相手も困っていて必死に頼んでくることもあるでしょう。
この場合も、中途半端な同情は逆に悪い結果を招きます。頼まれた仕事が専門外であったり、自分の仕事で手いっぱいだったり疲れているときなどは、受けないほうがお互いのためです。
その場合は、
「最近、仕事が忙しくて疲労がたまっている。お手伝いをしてあげたいけど今は無理」
「今日は大事な用事が入っている。申し訳ないけど時間を取れない」
などの理由を、はっきりと相手に言うことです。
どうしても断りにくいケースならば、条件提示をしてみるのもいい方法です。「完璧にはできないけれど、それでも問題ないか」を問いかけてみるのです。
例えば、次のような言い方です。
「1人では無理なので誰か手伝ってくれる人をお願いできますか」
「働いているので平日はできません。土・日だけでよければ考えてみます」
このような言い方は相手に歩み寄る姿勢を見せることになりますので、相手も受け入れやすくなります。ビジネスなどでの商談には、日常的に使われる手法です。
ビジネスだけでなく、プライベートでも地区の役員や、PTAの係などをお願いされる場合もよくあります。
このようなときも曖昧な返事は厳禁です。「迷っているだけだ」と思われると、必ず相手は押してきます。できない理由をはっきりと伝えましょう。
「NO」を言うことにためらう必要はありません。逆にこちらの気持ちをはっきり伝えるほうが、その後の人間関係にとってプラスになるはずです。
ただ、「NO」と言いたくても、時として、相手の勢いに押されて、「YES」と返事をせざるをえなくなる場面はあるものです。
相手の勢いが強いときは、そこから一時的に距離を置くことが最善です。
「少しお時間をいただけますか。○日までには返事を差し上げます」
と伝えるのが無難です。
周りがOKと言っているときに、自分だけがNOと言うのが気まずい、という人の場合も、勢いに負けてついついYESと言ってしまうことがあります。
すると、その後、1人で悶々とどのようにしてキャンセルしたらいいかを考え、悩み続ける羽目になります。
そうなる前に先手を打って一呼吸を置くようにしましょう。それからいつまでに返事をするかを相手に伝えます。自分が冷静になれる程度の時間を空けてください。
相手が目上の人だったり、重要な取引相手だったりすると、頼み事をなかなか断りにくいケースがあります。このようなときは自分以外の人を使って断る方法がおすすめです。
例えば、次のような言い方です。
「私一人の判断では荷が重すぎますので、社に帰り、上司と相談のうえ、返事をさせていただければと思います」
「この案件は私の裁量だけで決めることはできませんので、上司ともども充分に検討して、返事をさせていただきます」
この場合、実際に自分に裁量があってもなくても使って構いません。すぐに断ると相手に失礼になると判断した場合、口実として使ってもいいと思います。相手も言われたからといって嫌な気持ちにはなりません。
本当に荷が重い場合はもちろんのこと、ビジネスでの駆け引きではこのような言い方をよく使います。
相手の勢いが強い場合、本当に迷っている場合、一時的に時間を作りたい場合、すぐに断ると失礼な場合。まさにいろいろなパターンに応用できる方法です。みなさんも断る言い方の1つに加えてみてはいかがでしょうか。
言いにくいことを伝えなければならない場面は、日常、ビジネスで多々起こることです。そんなときに拙著「相手に納得してもらえる言葉」「関係を崩さずに受け入れてもらうフレーズ」など、言いにくいことを伝えるコツを満載した『困ったときの言いかたルール:「言葉選び」「タイミング」「心くばり」』を参考にしていただけると幸いです。