「部下からの評価が低かった」自分が変われた理由

■個人プレーではよい仕事、大きな仕事はできない

この経験があったので、私が2014年にカーニーの日本の代表者になったときも、チームの力を高めていこうと思いました。産業を、社会をよりよく変えていきたいという思いをクライアントと共有する。そして、それを実現していくためには、チームとしての力を最大限に発揮しなければなりません。カーニー自体も変革が必要でした。

当時の東京オフィスは、個々のコンサルタントの力量は非常に高いけれども、オフィスとしてはその集まった能力を最高には発揮できていないのではないかと気づきました。

たとえば自分がそれまでプロジェクトに取り組んでいた会社で、新しいプロジェクトのコンペをすることになった。しかしそれは自分が得意なテーマではないテーマだとする。そんなときもほかのメンバーに声をかけていないのではないか。

彼らは自分がクライアントを独り占めしているつもりはなかったかもしれません。もともと先輩たちがそういう仕事のやり方をしてきているのを見習っているだけかもしれない。ともかく、これからは仲間と仕事を共有してもらうことにしました。

カーニーでは、個々の力量をチームの力として最大化できていないと気づいたのは、パートナーが集まった会議などでも、各人からクライアントの話が出なかったからです。

「この会社はこの問題があるよね」

「今この業界はこういうふうになっているんですよ」

という話が出てこない。クライアントの状況を共有しない。一人ひとりが自分のクライアントを囲い込んで独り占めする、いわば「たこつぼ」に入っている状態です。これは変えたほうがいいと直観しました。

アウトプットが足し算から掛け算にならない

ある仕事を一人のパートナーが抱え込み、新しいテーマに詳しいほかのパートナーがいたとしても、その人をクライアントの前に呼ばないとなると、どうなるか。せっかくあるテーマでよい仕事をしても、別のテーマではほかのファームにコンペで負けてしまう。

結果として焼き畑農業というか、今年はこの会社の仕事をして、来年は別の会社の仕事をして、というようなパートナーもいました。しかしそれではパートナー個々人の業績目標は達成できたとしても、クライアントとの関係は太くなっていきません。

一人では、どんなに活躍してもアウトプット(成果)は「足し算」でしかありません。「掛け算」にならない。カーニーの本当に力がある人たちが組めば、おそらくジャズの即興演奏のようなことができる。それは面白いのではないかと思いました。

社長の前で説明しているとき、思いもかけない質問をされて、一人では答えられないときがあります。言葉に詰まったとき、その場に仲間がいれば、考えをまとめるまで一分間ぐらい何かしゃべって、場をつないでくれることも期待できるでしょう。

■コンサルティングも集団戦に変わっている

コンサルティングファームは、昔はどこも独立したパートナーの集団という色が濃かったと思いますが、今は「ファームとして何ができるか」という勝負になっています。これは日本でもグローバルでも同じです。どんな課題が来ても、複数のパートナーが協力して、チームとしてベストな解答を出すというイメージです。

カーニーはなんとなくまだオールドファッションの趣が強いな、という気がしたので、集団戦の強さも発揮できるようにしました。しかし、なかなか言ったとおりには変わらない。とくに抵抗が大きかったのは、「クライアントを囲い込まない」という部分でした。

私は、かつてブーズで、日本にいたオランダ人のパートナーから、
「the more you share, the more your client will be benefitted」と言われた話をしました。