書籍、映画、アニメ、ゲームなどの幅広いプラットフォームから多彩なIP(インテレクチュアル・プロパティ=知的財産)を創出しているKADOKAWAグループ。映画に絞るだけでも、『犬神家の一族』や『セーラー服と機関銃』など、1970年代~1990年代にかけて常識破りの戦略で、日本中に一大ブームを巻き起こした角川映画の印象が強いという人も多いだろう。
だが、KADOKAWAグループの映像資産はそれだけではない。2002年には老舗の映画会社・大映から全事業の営業譲渡が行われ、黒澤明、溝口健二といった巨匠のクラシック作品をはじめとした数多くの作品がKADOKAWAのライブラリーに加わった。2005年には洋画を中心に数々の映画を配給していた日本ヘラルド映画を子会社化。これによりKADOKAWAグループは、従来の角川映画の作品に加え、洋画・邦画問わず、豊富なライブラリーを有するようになっている。
三池崇史監督、寺田心主演による冒険ファンタジー『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(全国公開中)は、そんなKADOKAWA映画の最新作だ。そもそも『妖怪大戦争』は、1968年に大映京都撮影所の特撮時代劇として製作された作品。さらに、2005年には角川グループ60周年を記念して製作した『妖怪大戦争』(三池崇史監督、神木隆之介主演)を公開、興収20億円の大ヒットを記録した。今回の作品はそうしたシリーズの最新作となる。
2005年の「平成版」の『妖怪大戦争』は、KADOKAWAと大映が1つのコーポレーションとなった証しとして、大映のIPを活用する作品の先例となった。文芸・映像事業局 映像企画制作部の椿宜和部長は、「KADOKAWAが大映を引き継いだ象徴のような作品だった」と作品の成果を振り返る。
そして前作から16年の時を経て、令和の世にシリーズ最新作が復活することになる。そのきっかけは、KADOKAWAグループの角川歴彦会長の、『アベンジャーズ』にも負けないような「とてつもなくスケールの大きな映画を作りたい」という熱い思いだったという。
KADOKAWAといえば、出版と映画がしっかりとタッグを組み、ジャンルを超えた多角的な宣伝展開を行うことに特色がある。例えば鈴木光司の小説を映画化した『リング』に登場する「貞子」は、日本でも何度も映画化され、果てはハリウッドでも映画化されるほどの人気キャラクターとなった。そして次の多角化展開のコンテンツとして白羽の矢が立てられたのが「妖怪」だったのだ。
また、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』では、妖怪たちが恐れ、人間界にも大きな災難を呼ぶ “妖怪獣”に立ち向かう存在として「大魔神」が55年ぶりに復活することも話題となっている。「大魔神」とは、1966年に大映が製作した特撮時代劇に登場する巨大な守護神。「大魔神」と「妖怪」というユニークなコラボが可能となるのも、KADOKAWAが誇る豊富なIPゆえだろう。
IPを地域連携のシンボルとして活用する動きも進める。中でも、本作の舞台でもあり、KADOKAWAの新拠点を設置した埼玉県の「所沢」がその中心地になっている。
所沢が、映画の舞台に選ばれたことには大きな理由がある。
緑豊かな武蔵野の台地には、太古からの妖怪伝説が言い伝えられてきた。日本列島を東北日本と西南日本で分断していた“フォッサマグナ(大地溝帯)”の境目が武蔵野台地のまさに所沢であり、フォッサマグナに眠る古代の化石たちが一つになってできあがった巨大な妖怪獣が、東京に向かうのをなんとか阻止するために妖怪たちが奮闘するというのが今回の映画の物語の骨子だ。