2023年にネット広告の精度が「ガタ落ち」する理由

閲覧履歴に基づくネット広告が当たり前の世の中ですが…(写真:EKAKI / PIXTA)

「閲覧を続ける場合、Cookie(クッキー)の使用に同意したものと致します」――。

インターネットでサイトを見ているとき、このような文言が表示されたことがある人は多いのではないだろうか。そして訳もわからず「同意した」ことになっている人も少なくないだろう。

クッキーとは、スマートフォンやパソコンでインターネットを閲覧するためのSafariやChromeといったブラウザに「自動的に埋め込まれる」情報であり、ウェブサイトで検索・閲覧・購買といった行動が「知らないうちに」個人(ブラウザのID)と紐付けられ、「勝手に」広告関連業者の間で流通しているものだ。

たとえば、クッキーを使えば、「通販サイトでYシャツを買い物カゴに入れた30歳代の男性」といった、具体的な人物と行動履歴を追跡したデータを広告主は入手できる。

「クッキー=個人情報」で規制強化へ

しかし、欧州や米国の一部ではクッキーを個人情報だと断定し、第三者への提供を禁止した法律が施行されている。そしてクッキーを規制する動きは、全世界に波及しようとしている。

実際、Googleは2023年にクッキー(cookie)の第三者提供を廃止すると発表した。

このことにより、個人を「ほぼ特定」して出せていた、いわゆる「ターゲティング広告」が事実上不可能になる。つまり、消費者の個人情報は守られるようになるが、企業は「簡便かつ安価に」得られていたマーケティング情報が得られなくなる。そのため、「クッキーレス時代」を意識したマーケティングへの大転換を迫られている。

2019年、日本のインターネット広告費は、長年首位だったテレビ広告費を初めて超えた。それどころか、2020年には総広告費約6.2兆円の約4割(36.2%)を占め、マスメディア4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)の合計(36.6%)に並んだ(電通「2020年 日本の広告費」より)。

インターネット広告は、ユーザの性別や年齢といった属性や、インターネット上で検索・閲覧した履歴などの情報もとに、ターゲットを絞って広告を表示することができる。

そして広告の先にある商品購入や会員登録ページなどに誘引できた時のみにしか費用が発生しないことや、予算に応じて広告の出し先や量を細かく選択できることなどが、広告主である企業からここまで重用されるようになった理由だ。

クッキーは業者間で流通

サイトで自動的に吸い上げられたクッキーは、ネット広告やマーケティング業者の間で流通される。これは「サードパーティークッキー」と呼ばれる。一度インターネットで閲覧した商品が、別のサイトに移動しても「追いかけるように」表示されるのは、このためだ。

個人情報の取り扱いに厳しい欧州は、サードパーティークッキーの勝手な流通は、個人情報の不正な第三者提供にあたると断じて「EU一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)」を定めた。

GDPRでは、クッキーなどの仮名化された情報であっても、個人情報であることに変わりがないとしていて、利活用したいのであれば、「ユーザから能動的な同意を取ることが必要」と明言している。

今後は、冒頭のような「サイトを閲覧し続けることで取得されたクッキーが第三者に提供されることを了承したことになる」という「よくある」やり方は違法になる。

米国のカリフォルニア州でも、CCPA(California Consumer Privacy Act)というGDPRと類似した法律がすでに施行されており、米国全体で適用される連邦法にその内容が組み込まれる可能性が高い。